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2006年9月15日 (金)

安納芋と柔らか麺と順天堂さん。 2003年1月18日

母を整形外科へ連れていった。ペインクリニックは効果が持続し始めて1週間から2週間毎に延びた。治療は1時間程かかるのでその間、絵をメモ帳に描きながら待っている。

患者は殆ど老人である。
今日は60代の裕福そうな女性が入って来た。
「順天堂から来ました。」
彼女はいきなり大声で言った。一瞬、病院関係者と思ったが新しい患者である。順天堂で紹介状を貰って来たらしい。
彼女は紹介されたことが嬉しく、受付とのやり取りの中で何度も「順天堂」を加えた。

やがて彼女の診察番が来た。
受付はうっかりして「順天堂さん」と彼女を呼んでしまった。
彼女は更に嬉しそうに診察室へ入っていった。

「私はとても忙しい人です。先週に順天堂さんでレントゲンを沢山撮ったので、今日は注射だけにして下さい」
診察室から、先生に無理を言っている声が聞こえた。
このように、面白い患者が現れると、退屈が紛れて楽しくなる。

帰宅して、お昼はチャンポンを作った。
私は麺は煮込んだ方が好きだ。
近年、シコシコ麺ばかりになってしまったのは残念である。麺は適当な柔らかさがあった方がダシが絡んで美味い。私が育った南九州にはシコシコ麺はなかった。固い麺は讃岐うどんやスパゲッティの影響かもしれない。

先日、讃岐うどんの名店で食べたら、強烈に固い麺でダシが上滑りして美味くはなかった。
それはラーメンでも同じで、有名店に入ったら、堅過ぎて生に近いものが出た。
「うちのは秒刻みで一瞬湯通しするだけだから美味いよ」
店主は自慢げに話していた。

美味いか不味いかは客が決めるものだ。
多様性を認めない文化はやがて衰退する。麺も客の好みに合わせてシコシコから柔らか麺まで色々あった方が良いと思っている。

同様にサツマイモやカボチャもホコホコが美味いとされている。
私はカボチャは黒皮のねっとりと滑らかな口当たりの好きだ。
サツマイモもねっとりしたのが絶対に美味い。
私の郷里の南九州では、芋はねっとりタイプが主流である。
東京では主産地の種子島安納の地名を取って安納芋と呼んでいる。

郷里では、透明な黄金色の形状が鬢付け油=日本髪を固める為の固形の油=に似ているので、ビンツケ芋と呼んでいた。隣町の十條に、このビンツケ芋で作った大学芋を店頭で揚げている人気店がある。バリッと揚がった皮をかみ砕くとクリーム状の中味が現れ実に美味い。これが流行のホコホコ芋だと粉っぽくて不味い。

しかし、このビンツケ芋は腐りやすく、日持ちがしないので東京の八百屋には嫌われる。
最近、安納芋の名で有名になったおかげで、時折スーパーの店頭に並ぶようになったが、値段が高い上保存方法が悪く痛んでいる物が多い。

買う場合は、斑点の無い綺麗な品を選ぶと良い。売り手に商品知識がなく、これではせっかくの名品が誤解されてしまう。私は今も、日南市大堂津の知人がびんつけ芋を送ってくれるので普段に食べている。


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