魂が花の香りを嗅ぎにやって来た時に・・・ スー族の言葉。 2003年2月26日
手元にジョセフ・ブルチャック編「それでもあなたの道を行け」めるくまーる出版の本がある。以前、その出版社の本の装丁をした時、資料として貰った。ジョセフ・ブルチャックはチェコ系白人で4分の1はインディアンの血が流れている。その本はインディアンの言葉を編集しものである。
インディアンの言葉は示唆に満ちている。
本では彼等の霊的世界が語られているが宗教的ではない。明るい自然主義が横溢していて、読んでいて素直に心が洗われる。
その中で、ジョセフ・ブルチャックが数十年前見た一シーンが心を捕らえた。
彼はサウスダコタ州ミッションのキリスト教墓地で死者の埋葬に立ち会っていた。儀式が終わると、スー族の老女が進み出て墓石の上にオレンジを1個置いた。するとすかさず、牧師がオレンジを取り除き咎めた。
「何時、死者が戻って来て、このオレンジを食べるというのですか?」
すると、会葬者のスー族の男が言った。
「魂が花の香りを嗅ぎにやって来た時に。」
それで牧師は口を閉じ、何も言えなくなった。
キリスト教には色々な宗派があり、総てがオレンジを供えたことを咎める訳ではない。しかし、この逸話には白人とインディアンの考えの違いが見えて興味深い。
インディアンの自然観はハッとする程新鮮で心を打つ。彼等の思想では死者と生者を分けず一体視する。その辺は仏壇に食事を供える日本人の感覚に近い。やや違うのは彼等の死生観に地獄極楽はないことだ。現世での罪や善行は現世で終結し、死後の世界では真っさらに生まれ変わり、新たな人生が始まると考える。
地獄極楽観が生まれなかったのは、彼らの社会は秩序が保たれ、凶悪事件が殆ど無かったからである。実際、凶悪事件は白人社会のもので、近世まで彼等の社会にはあり得ないことだった。
--注、インディアンではなくネイティブ・アメリカンと呼ぶのが識者の通例である。しかし、私に差別意識は無いので自然にインディアンと呼んでしまった。申し訳ない。
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