続々--正しい歯科医のかかり方 2003年3月8日
高校生の頃、私が入っていた山岳部にザックを計る30㎏のバネばかりがあった。太さ5,6センチはある重くてゴツい代物である。私はある日、そのバネばかりで腕の力を計ってみようと思った。若さとは考えのないことをするものだ。私は無謀にも、バネばかりを壁の5寸釘に掛けて、フックを片手で思い切り引いた。次の一瞬、私は何が起きたのか分からなかった。ただ、目の前を光が走ったような気がした。その後、回りの皆が私を見てゲラゲラ笑っている。光が走ったのは、バネばかりが5寸釘から外れた瞬間であった。バネばかりは私の右上犬歯を直撃し、半分を見事に砕いていた。1キロはある代物が強力なバネの力で空中を飛んだのである。我に返り、地面に激突した跡を見て、私はぞっとした。歯には不運であったが、私自身には大変な幸運であった。ほんの少しずれれば顔面を強打し、私は取り返しのつかないことになっていた。
すぐに歯医者に行って欠損部分を銀で埋めてもらった。当時は銀歯が格好良いと思われていたので、私はことあるごとに、にーっと笑って、キラキラ光る銀歯を自慢した。
上京してすぐ十條に住んだ。その頃、近所に暇な歯医者があった。私は気まぐれに、歯の検診をしてもらおうと行ってみた。しかし、それがとんでもない間違いだった。
医者が言うには、虫歯はないが銀を詰めると虫歯にならないからやっておいたがいいと薦めた。そう言うものかと、よく分からないまま承知すると、医者は健康な歯に穴を明け水銀合金を詰め込んだ。それは水銀アマルガムと呼ばれ、お湯の中では液状であるが、口中温度では個体になる性質を利用して、当時は普通に使われていた。微量な水銀が溶け出るそのような危険なものは今は使われていない。後年、友人の歯科医にそのような虫歯予防はあり得ないと聞かされ、じたんだ踏んだが、後の祭りだった。
その時、銀が入っている犬歯はレジン製の差し歯に替えたが良いと言われた。頼むとすぐに神経を抜かれ白い差し歯に変わった。その歯がとんでもない代物で、直ぐに抜けてしまった。何度も接着し直してもらっている内に、やっとその歯科医がとんでもない薮医者であることに気付いた。
今度は知人の紹介で地元で評判の歯科医へ行った。
年配の頑固そうな歯科医であったが仕事はしっかりしていた。しかし、疑り深くなっていた私は老医師に作り直す犬歯の歯根蝋型を見せろと言った。そして、ちょっと短いとか、形が悪いとか、文句を言った。しかし、老医師は怒りもせず何度も蝋型を取り直して、「これでどうだ。」と見せてくれた。
今思うと18の若者の無理を良く聞いてくれたものだと感心する。しかし、そのようにうるさく言って作ったおかげで、保険適応の安物にもかかわらず、犬歯の差し歯は40年後の今も健在である。
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