変遷 2003年6月5日
母の入れ歯の調子が悪い。歯科医院で一度調整してもらったが、今度は頬を噛みやすくなった。些細な母の訴えが私にはストレスである。
歯科医院へ母を連れて行く今日は夏日差しになった。予約は11時50分。ゆっくり家を出たが、それでも自然公園で待ち時間を一時間程過ごした。
公園の母の散歩コース中程に榊の幼木がある。母は立ち止まり幼木に触れる。母は幼木に励まされているように感じるらしい。自然公園なので、これから先も切り倒されることは無く、大きく成長してくれるだろう。
車椅子の母を木陰に置いて、私は遊歩道に腰を下ろして休んだ。見える限り緑一色で奥多摩辺りへ出かけた気分である。木々の間から吹き過ぎる涼風が心地良い。これは贅沢な時間である。木材チップを樹脂で固めた路面を見つめていると蟻やダンゴ虫が歩いていた。
蟻は窪みの一つ一つを律儀に点検して歩いている。窪みの奥に草の種が落ちているようだ。蟻は勤勉と思われているが、実際に働いているのは全体の2,3割で、他の蟻は働いているふりをしているだけらしい。これが人間社会だったら大変なことだが、破綻しない蟻社会は面白い。ねたんだり意地悪する蟻がいないからかもしれない。
歯科医院は自然公園から7,8分の距離である。もう一度、公園出口にある車椅子用トイレで母の用をたたせて、弁天通りへ出た。弁天通りは取り壊された店舗が多く、跡地は駐車場になっている。しかし最近は利用のあてがなく、夏草が生い茂ったままの空き地が増えた。
上野歯科医院は予約時間を守ってくれるので助かる。母は40分かけて総入れ歯を調整してもらい、頬を噛む不具合は無くなった。
帰りは駅前で食材のまとめ買いをした。雑踏を抜け、静かな緑道公園に入ると救われる。自然の涼気は本当に素晴らしい。木漏れ日の中、小鳥の声を聞きながらのんびり車椅子を押した。
2時に帰宅してすぐ洗濯機のスイッチを入れ、急いで昼食を作った。7月の作品展用の作品づくりで夜更かししているので眠い。昼食後、30分午睡を取った。目覚めるとベランダに干した洗濯物は既に乾いていた。
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