親孝行 2003年7月4日
母の入院日が決まりホッとした。それまで、母の散歩は普段通り続けることにした。
住い下の公園にノウゼンカツラが咲いた。初夏の日差しの中に咲くこの濃オレンジ色の花は南国的である。この花を見る都度、4年前その花の下で焼身自殺したホームレスのことを思い出す。今は彼が死んだベンチは取り払われ、微かにその跡が残っている。
最近、母と怒鳴り合うことがなくなった。母は気が強く、80過ぎても激しく議論することがあった。しかし90近くなり、背が丸くなり、杖をついてソロソロ歩く母を見ていると厳しい事は言えない。子が親をいたわるようになってしまったことは寂しい。
母の車椅子を押す私に、老人達が挨拶した後、「出来る内に、親孝行はしておくものだ。」と決まって言う。以前は、老人達が好んで使う常套句と思っていたが、最近、それは違うと思うようになった。
老人達が親孝行を口にする時、遠い昔に死んだ自分の親のことが胸にあるようだ。見かけは老人であっても、少年少女の頃の心は消えてはいない。だから、草笛を吹き、笹舟をせせらぎに浮かべ、野いちごを摘み、白詰め草の花輪を作る時、老人達は一瞬子供時代に戻っている。そして、死んだ父母の姿が老人達の脳裏に去来しているのだろう。
10年後、もし私が元気だったら、同じように「親孝行はしないといけない。」と口にしようと思っている。
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- コロナ陽性となって起きる不都合と差別。Go Toトラベルの見直しは非科学的。令和2年11月22日(2020.11.22)
- 新型コロナは蔓延しないと終わらない。終息を急ぐあまり、自殺者とシャッター通りを残す愚策は止めてほしい。令和2年11月14日(2020.11.14)
- 上手な嘘と嘘の見抜き方で、営業・企画・宣伝力強化。冷和2年10月29日(2020.10.29)
- 報道の変化に新型コロナ終息が見えた。人口激増に備えての昆虫食。令和2年10月19日(2020.10.19)
- 今日は10回目の母の命日。令和2年7月1日(2020.07.01)