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2006年9月30日 (土)

親孝行    2003年7月4日

母の入院日が決まりホッとした。それまで、母の散歩は普段通り続けることにした。

住い下の公園にノウゼンカツラが咲いた。初夏の日差しの中に咲くこの濃オレンジ色の花は南国的である。この花を見る都度、4年前その花の下で焼身自殺したホームレスのことを思い出す。今は彼が死んだベンチは取り払われ、微かにその跡が残っている。

最近、母と怒鳴り合うことがなくなった。母は気が強く、80過ぎても激しく議論することがあった。しかし90近くなり、背が丸くなり、杖をついてソロソロ歩く母を見ていると厳しい事は言えない。子が親をいたわるようになってしまったことは寂しい。

母の車椅子を押す私に、老人達が挨拶した後、「出来る内に、親孝行はしておくものだ。」と決まって言う。以前は、老人達が好んで使う常套句と思っていたが、最近、それは違うと思うようになった。
老人達が親孝行を口にする時、遠い昔に死んだ自分の親のことが胸にあるようだ。見かけは老人であっても、少年少女の頃の心は消えてはいない。だから、草笛を吹き、笹舟をせせらぎに浮かべ、野いちごを摘み、白詰め草の花輪を作る時、老人達は一瞬子供時代に戻っている。そして、死んだ父母の姿が老人達の脳裏に去来しているのだろう。
10年後、もし私が元気だったら、同じように「親孝行はしないといけない。」と口にしようと思っている。

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