何となく大安吉日 2003年8月19日
絵描きで一番大変なのは生活資金を稼ぐことである。
私の生活の殆どは生活費稼ぎに費やしている。ちょっと躓いて生活費が危なくなると、夜中に不安で目覚めたりする。
父は家族に大変な額の債務しか残さなかった。それで、母には年金に類するものがない。自然公園で老人達が、年金が多過ぎて使い切るのに苦労するといった話をしてると羨ましくなる。
顔見知りの老人達が、最近、母の姿が見えないと聞く。母はポックリ死んだと噂がたっているようだ。ガンで入院していますと答えると、困った顔をする。それで逆に、私が老人達を慰めてしまう。
夏らしい日は先日1日だけで、早くも秋の長雨の様相である。今、羽化したセミは夏を知らずに一生を終えることになるのだろうか。
8月20日
病院へ行く前に池袋三越へ寄って商品券を買った。母が医師への謝礼に使うためである。私はそのような謝礼は不要と考えるが、90歳の母は今更考えを変える気はない。私の寂しい懐具合が辛い。
池袋から田端へ向かう。ホームへ駆け上がったが、目前で電車のドアが閉まってしまった。しかし。そこは電車の最前方、田端での出口は最後方である。
次の電車が来るまで、田端での出口に近いホーム後方へ歩いて行くと、すぐに電車が来た。慌てることはなかった。乗り遅れても駅を出る時間は同じになる。
運転席窓の風景を見るのが楽しい。
運転席にいた車掌は珍しく女性であった。見るのは初めてである。胸に付けた車掌証を見たいのだが、彼女は微妙に胸を手で隠す。その辺りが女性である。駅へ止まり、ホームで指さし確認をする都度、夏服の白い半袖の奥に下着が見えた。
母は頼んだ私の絵本を忘れたと文句を言った。商品券をこっそり絵本に夾んで担当医に渡す心づもりだったようだ。絵本は帰宅してから速達で送った。何となく夏が戻ってきて、何となくスムースにいかない大安吉日であった。
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