老人たちの唄う民謡 2003年10月11日
車椅子は歩道の僅かな段差にもつまずく。安全ベルトをしているので母を放り出すことはないが、歩道は危険が多い。傾斜にもハンドルを取られるので、たえず方向を修正しなければならない。背後から歩道を疾走してくる自転車にも注意しなくてはならない。緊張の連続で、整備され自転車通行禁止の緑道公園に入るとホットする。
赤羽自然観察公園には赤トンボが増えた。のろのろ歩く母は立ち木にでも見えるのか、赤トンボが母の帽子にとまった。赤トンボは時折飛び立つがすぐに母の帽子に戻る。そうやって暫く母の散歩に付き合って飛び去った。郷里では、赤トンボに死者の魂が乗っていると信じられている。
「甚平さん。良く来たね。」と母は赤トンボに話しかけていた。甚平さんとは母を可愛がってくれた曾祖父である。母は甚平さんのことよく話す。料理好きで、母は祖母からではなく甚平さんから料理を教わった。
帰り道は桐ヶ丘団地を抜けた。ここの車道は殆ど車の通行はなく、車椅子を押すのが楽である。高齢化が進んだ団地では自転車の通行もない。静かな団地の深い樹木の道を行くのは気持ちよい。
途中、団地の集会場からお婆さんたちが唄う東北民謡が聞こえた。日頃、とぼとぼと歩いている老人の姿からは想像もできない力強い声である。伴奏の尺八太鼓も素晴らしい。若くして田舎から上京し荒波に耐えて来た、大地に根を張った唄声である。
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