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2006年10月13日 (金)

幻臭    2003年10月17日

赤羽自然観察公園では強い日差しが草むらを照らしていた。その中を歩いていると、不意に肥やしの匂いを感じた。実際に匂いがしたのではなく幻臭である。
他にも幻臭は色々感じる。たとえば、野いちごの甘い香りやドイツハムのハーブの香りとかである。どれも幼年時代に嗅いだもので、心の奥底に強く記録されているものだ。

匂いは頭の中で自発的に再現はできないものらしい。たとえば、リンゴの色形を思い浮かべることはできるが、香りを頭の中に思い浮かべることはできない。しかし、リンゴの香りを嗅げばすぐにそれとわかる。香りの感覚は不思議なものだ。
私の場合、匂いは視覚によって蘇る事が多い。日差しの強さ、少し枯れ始めた草むら、それらの情景が田舎で暮らした幼年時代の記憶を蘇らせる。昔は日本中、田園地帯に行くと必ず漂っていた。以前、地方出身者を田舎臭いとか、肥やし臭いと呼んでいたが、今思うと本当だったのかもしれない。
最近は街の香りが少なくなった。私の育った漁師町は機械油と魚の匂いを嗅ぐと蘇る。上京してからの印象深いのは横浜中華街の八角の香りである。これは田舎出の私には強烈にエキゾチックであった。

香りが消えたのは街全体が清潔になった所為だ。昭和40年中頃までは隅田川はドブの悪臭がしていた。知人の浅草の職人さん宅を訪ねた時、漂うドブの匂いに閉口したことが、今になると懐かしい。

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