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2006年10月23日 (月)

絵描きとイラストレーターの現状  2004年2月12日

久しく連絡のなかった絵描きのTさんから電話があった。Tさんは近況を話した後、生活が大変だと話し始めた。そして、パソコンを初めようと思っているが、苦境脱出の手助けになるだろうか、と助言を求めた。Tさんの仲間にWebデザインで稼いでいる絵描きがいて、その気になったようだ。

「最新のWebソフトとhtml言語に熟達すれば、それなりに可能だが、パソコン好きの私でも相当に頑張らないと、その域に達するのは難しい。第一、初期投資もバカにならないし、仮にその関門を乗り越えても、客を確保する営業は更に難しい。」
Tさんにはそのような答えをした。一昨年から始まった母の介護で伺うことはなかったが、Tさんは年4回銀座やデパートで企画展をする売れ子だと思っていたので、意外な実情に驚いてしまった。

実際はTさんよりも私の方が大変である。
いよいよ蓄えが少なくなり、生活の方が危なくなった。こんな時、母に年金でもあれば助かるのだが、父に甲斐性がなかったのでそのようなものは無い。兄姉も老齢化して頼りにならない。
しかし、座して潰れるのを待つことはできないので、敬遠していたイラストの営業にも手を打った。しかし、肝心のデザイン会社に元気がない。デザインの仕事量は多いのだが、クライアントが経費を押さえるので、デザイナーは安い画像をフォトショップで加工したり、自分たちの過労働で応えている。
昔と違いイラスト全般の需要が激減している。昔、売れっ子だった旧知のイラストレーターたちも次々と都落ちして、彼等の仕事をマスコミで見かけなくなった。今、何とか食っているイラストレーターはデザイナー兼務の人ばかりだ。

先日、知らないイラストレーター希望の若者から相談を受けた。
「2,3年間だけ、収入を得るのは可能だが、使い捨てにされて次の若手に乗り換えられるだけだ。一生の仕事にしたいなら、デザイン会社かキャラクター企業に就職するか、マニュアル説明用イラストや機械分解図等の職人仕事に特化すれば何とかなる。」
現状を教えると、彼は就職は自信ないし、職人仕事はやりたくない様子で、ひどく落ち込んでいた。もっとも機械分解図等はCADなどのソフトを使えば、素人でもでもかなり良い絵が描けるので、こちらの先行きも厳しい。

それでも、年に2,3回は大手企業発注のカレンダーへのペレゼン参加がある。ギャラは数百万単位だ。高額ギャラだけに競争は極端に厳しく、私は50回以上落ちた。最近は依頼があっても、5万から10万のプレゼン参加料だけをあてにしている。

本業の絵描きであるが、芸術家は営業をしてはならないので、売れるのを待ちながら絵を描き続けている。しかし、しばらく声がかからないと永久に売れないのでは、と不安になる。それでも、私は地道に絵を描く他ない。行き詰まっていても借金は皆無で、何か行動すれば何とかなると信じている。

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