フノリの匂い 2004年3月23日
冬に戻ったような暗い空から、時折冷たい雨が落ちる。車椅子の母に雨具を被せて散歩に出かけた。母は咳がでやすいが、このような湿った日は却って気管が楽のようだ。私もこのような寒い日は楽である。
赤羽自然観察公園は雨にもかかわらず散歩する老人が多かった。
今、浮間の庄屋屋敷を公園の一部に移築中である。10ヶ月程かけて基盤ができて、ようやく納屋の骨組みの組み立てが始まった。これから壁塗りも茅葺き屋根も総て伝統的に作る。今からその完成風景が楽しみである。
私の子供時代、壁は藁を刻み土に混ぜて壁の下地にした。漆喰は大釜でフノリを溶かし麻の繊維と石灰をこねて作った。子供たちは周りで終始作業を見物していたので、いつの間にか工程を覚えてしまった。今もフノリを大釜で煮る匂いを嗅ぐとその頃を思い出す。
その頃、母はフノリで髪を洗っていた。他に菜種の油粕や洗髪用の粘土もシャンプ代わりに使った。洗髪用の粘土は椿の花が描かれた包装紙に包まれた棒状のもので、端からくずして使う。正確には粘土ではなく石の微粉末で、その油の吸着力を利用するものだ。鬢付け油のベタつきも、それで強力に落せた。仕上げのリンスは卵の白身を使っていたようだ。
小雨の中、土筆が頭を出していた。鋪道から手を伸ばす範囲ですぐに一握り程採れた。採った土筆は卵とじにして食べる。ほの苦い味に母も私も春の訪れを感じる。
寒さに桜は一時開くのを止めた。それでもヒヨドリが開いている桜を楽しそうについばんでいた。スズメは花の茎を切り蜜を味わった後地面へ落とす。花の量からみると、それは僅かな数で気にはならない。むしろ、子どもの悪戯みたいでほほえましい。明日も雨が降りそうだ。
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