草花や樹木の名を少年に教えた 2004年3月30日
桜は盛りとなった。思いがけない場所に桜が忽然と出現して夢のように美しい。
赤羽自然観察公園での顔馴染みの老夫婦が、小学生の孫をつれ来ていた。
少年の住まいは神田で公園の自然が珍しい。公園石垣の青蜥蜴のアパートを教えてあげると、顔を出している青蜥蜴を見つけて喜んでいた。
10年後か20年後、老夫婦はいなくなるだろう。その時、成長した彼が少年時代を思い出して公園を訪ねるかもしれない。その時、公園の老人たちの顔ぶれはすっかり変わっているが、木々は変わらない。
もしかすると、彼は子供を連れて来て、私が教えているように公園の草花の名を教えているかもしれない。そんなことを空想しながら、少年に草花や樹木の名を教えた。
建築中の古民家の納屋の茅葺き屋根の竹が組終わった。関東は雪が少ないので、柱は驚くほど細い。それでも100年以上しっかりと耐えるのは、よほど構造が巧く出来ているのだろう。来月に一般募集のボランティアが手伝って茅葺きが始まる。
雨が降りそうな天気である。曇り空の下、新芽の緑が鮮やかに見える。風の音も、野鳥の声も楽しそうに聞こえる。この自然の音を聞いていると厭なことを忘れてしまう。
最近、後2ヶ月の命と思って仕事をしている。このまま仕事はじり貧になって、ぷっつりと途絶えるような気がしてならない。深夜一人で仕事をしていると不安は一層現実味を帯びる。今日は日曜でテレビは深夜に終わった。テレビが消えると殊に辛くなる。テレビの賑やかさは孤独を癒す反面、心をひ弱にしているのかもしれない。
昔、毎週のように一人で登山をしていた。夜のキャンプには当然テレビはないしラジオもない。しかし、星空を眺めて梢を過ぎる風の音を聴くのは楽しかった。
比べて今は、耳を澄ましても環状8号線の車の音とJR埼京線の列車の音が聞こえるだけだ。この都会の音では、山中のように心は満たされない。
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