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2006年11月28日 (火)

心の奥へ消えて行く作家の人生 2004年10月11日

先日訃報が届いた知人の1日だけの遺作展会場のある月島へ出かけた。
午前中の母の散歩の後、家事が総て終わったのは午後2時。いそいで着替え、埼京線北赤羽駅へ駆けて行ったが、各駅停車の列車は出たばかりだった。

ホームで次の各駅停車が来るまで30分近く待つことになる。
その間、隣のベンチのアベックを眺めていた。言葉の端々から二人は劇団の若手のようだ。男は二枚目系の若手。女はどうみてもその他大勢の目立たないタイプ。
喋っているのは男ばかりで、内容は劇団へ対する愚痴である。それも、冷めたお粥のようなベタベタした迫力のない内容だ。しかも男は終始ポテトチップ1枚を口元に付けたまま、時折ゴマ粒程囓っては喋り続ける。その台詞も頭だけはっきりしていて、語尾は消え入るように弱々しい。対して女は「ウンウン」と頷きながら男の手にしている袋からポテトチップを休みなく口へ運んでいる。多分、女はポテトチップに夢中で、男の言葉は耳に入っていない様子だ。

表舞台にはい上がって来る役者は、美醜に関係なく燃えたぎるような情熱を感じるものだ。しかし、この二人には、それがまるでない。私は眺めながら、この二人は大成しないと思った。

ようやく電車に乗ると、日曜の所為でアベックが多かった。
いつも思うのは、片方が熱いと片方は冷めていることだ。女にベタベタ寄り添われている男は不機嫌で、男がやる気満々の女は冷めている。世の中、相思相愛はそうはいないものだ。

池袋で有楽町線に乗り換え、30分程で月島へ着いた。昔はもんじゃ焼きを食べによく行ったが、10年ぶりの街はマンションが増え、明るく変身していた。途中、運河の写真を撮りながら、アールデコ様式の古い小学校の地下会場へ着いた。

遺作展と言っても葬儀に近い。香典代わりに僅かな額を受付の箱に入れた。後はひたすら飲み食べて、旧知のデザイナー等と談笑するだけだ。時折、故人の話題は出るが、殆どは仕事の情報交換が多かった。
そうやって、一人の作家が人々の記憶の奥へ消えて行くのだと思うと、ふいに言い知れぬ寂しさを覚えた。

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