オキーフとゴッホの孤高の違い。 2004年10月23日
昨日、アメリカの国民的画家、オキーフをNHK教育テレビでやっていた。
彼女は花一輪を大画面に描くことで名を成した画家である。夫と死別した後、彼女はサンタフェ郊外の砂漠で孤高に絵を描きながら98歳の生涯を終えたと、番組ではありきたりの解説をしていた。
しかし、実際は違う。彼女はニューヨークの画壇と接触するのを好まなかっただけで、それを孤高と言うのは間違っている。サンタフェ郊外の住まい周辺には知人もいて、それなりに温かい人間関係はできていた。しかも、画家として早くから認められる幸運にも恵まれ、経済的にも豊かだった。孤高とはゴッホのような画壇からも友人からも収入からも見放された画家を評する言葉で、彼女には違和感を感じる。
彼女が中央と関係を切ったのは、単に人間関係が煩わしかっただけのことだ。ゴッホのように認められたくても無視され続けた境遇とは大きく違う。
更に恵まれているのはサンタフェ郊外の彼女の環境だ。荒野の乾いた清浄感と、ゴッホが選んだアルルの明るさは違う。南フランスの明るさはゴッホを追いつめ、自殺に追い込んでしまったが、サンタフェ郊外はオキーフに安らぎを与えた。
伝記を読む時、無意識に自分の生き方の参考にする。
しかし、最近は自分のモデルになり得る生き方は無いと思うようになった。あえて、人と違う生き方を選ぼうとは思っていないが、考え抜き、試行錯誤の末に辿り着いたのなら、何であってもそれが自分の生き方だ。
こんなことを考えるのも、晩秋の涼風のせいかもしれない。
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