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2006年11月 5日 (日)

広漠とした世界へ飛び去った羽蟻の潔さは心を打つ。 2004年5月28日

昨日の夕暮れ、玄関を開けると通路に大きな羽蟻がいた。新しい営巣の場所を探している女王蟻である。摘んで空中へ放ると、そのまま新河岸川上空まで飛んで、消えるように舞い落ちた。多分、河川敷の茂みが彼女の新しい営巣地になるのだろう。

私はそのまま、眼下に広がる風景を眺めていた。薄雲を透して夕日が鈍く光っている。この広大な都会風景を眺めていると安らぐ。
ドアは鉄亜鈴をストッパーにして開いたままにした。部屋に戻り、廊下の薄暗がりからぼんやりと風景を眺めていると更に心地よい。玄関前の通路は滅多に人は通らない。ドアは深夜まで開いたままで、仕事に疲れると部屋から夜景を眺める。

いつも漠然と不安がある。こから先、生活はどうなるのか、母はいつ頃に逝くのだろうか、日本は何処へ辿り着こうとしているのか、考えてみても、未来に良いことは思い浮かばない。
一昨年、母が倒れると同時に私の肩が痛み始めた。去年はテレビのリモコンを持ち上げても激痛が走った。今はかなり軽減したが、まだ鈍い痛みが残っている。40代までは視力は良く、ルーペで覗くようにものが見えていた。しかし今は仕事中は眼鏡をかける。他にも探せば、老いの兆候は数えきれない。

不安が募ると、玄関から地上の風景を眺める。その広大な街の中で、毎日人が死に、生まれて来る。そこで生活する人たちには哀しみもあれば歓びもある。時間は大河のように、膨大な人生を静かに押し流している。そして、私もいつか、その流れに飲み込まれて消えていくのだろう。

深夜になっても、飛び去った羽蟻の姿が脳裏に残っていた。広漠とした未来へ向かって、躊躇せず恐れることもなく、飛び去った小さな羽蟻の潔さが心を打った。

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