遺髪 2004年6月11日
絵の具パレットを変えたら、やりにくい。慣れようと努力したが、結局気分が乗らず元に戻した。
小説家は万年筆が変わると書けないと言う。パソコンで書いている作家もキーボードが変わると書けないようだ。
絵描きは小説家ほどこだわりはないが、画材メーカーを変えると、制作意欲が失せることがある。私の場合はボードにこだわる。高価だから良いということはなく、素材の色味、柔らかさ、手触り、その感覚は微妙だ。キャンバスは布目が嫌いなので、徹底的に布目を地塗りで潰し平坦に仕上げて使う。
バレットは以前のように、絵の具溜めに同色をグラデーションに調合して並べた。そのパレットを10段重ねたのが二つで、調合した色数は総計160色になる。それで、いつでもすぐに描けるようになった。ついでに仕事机も片付け、使わないものは思い切り捨てた。
整理していると和紙に包んだ母の髪の毛が見つかった。これは去年、母が肝臓ガン手術で駒込病院へ入院の時、髪が長すぎるので切った髪である。もしかすると、手術に失敗して、遺髪になるかもしれないと思い捨てずにしまっておいた。
母は白菊会の会員で死んだらすぐに献体することになっている。だから葬儀は遺体なしで行うことになる。その時、遺髪を遺体代わりに祭壇にまつろうと思った。
父も白菊会会員で、死んだ時、すぐに日本医科大の解剖学教室に電話を入れた。医学的には新鮮なほど有用で、すぐに教室から父を迎えに来た。だから葬儀は父の遺体が無しで行った。その時、母が死んだ時は遺髪をまつろうと思った。
父の遺骨は一年後に日医大の解剖教室から紅型の風呂敷に包んで持ち帰った。その後、博多の菩提寺で法事をして納骨した。
昨夜、NHK特集でハローワークを取り上げていた。
ハローワークはバブル期以上の活況を呈しているらしいが、実体はバブル期と全く違う。求人の殆どが期間限定の臨時雇用だ。番組で取り上げられた元広告クリエイター53才はかっては年収2000万に達していた。それが40代でリストラに会い、再就職を求めたが果たせず、結局、自分で広告会社を立ち上げたが失敗。600万程の借金を抱え、妻子と別れ、ホームレスを覚悟しながら、細々と異業種で暮らしてきた。今回、幸運にも広告業界に復帰がかなったが、番組では前途多難を匂わせていた。
この話は人ごとではない。私は老母を抱えているだけ、彼より厳しい状況にいる。
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