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2006年11月24日 (金)

歴史を見て来た椎の古木 に安らぐ 2004年9月10日

赤羽自然観察公園に巨大な椎の木がある。幾本もの太い幹が地をはうように伸びて、ダイナミックである。その木陰はテニスコートがすっぽり入る程に広い。最近、私達はそこを休憩場所に変えた。母が持参した冷たいお茶を飲んでいる間、私は幹の上に寝転がる。木陰にはいつも爽やかな風が吹いていて、この上なく心地よい。「落ちないでよ」と母は心配するが、幹の上は広く心配は無い。

世間のどんな豪華な設備よりも、この木陰は贅沢で心地良い。仰向けになって梢を見上げると、太い幹がうねうねと伸びて、鬱そうと茂る葉には生命が溢れている。
樹齢は2,3百年。椎の木は、公園の前身旧日本陸軍の工廠のころから沢山の歴史を見てきたことだろう。10月になれば沢山の椎の実が落ちる。それが楽しみである。

9月12日

今年は好天に恵まれ、緑道公園のナツメは大豊作だ。しかし、大ぶりの実は高い枝に熟していて手が届かない。それで、長い細竹と針金と古靴下で捕虫網のような道具を作った。針金は逆鍵穴形に曲げ、その頂点のスリットにナツメの実を引っかけ、引っ張ると古靴下の袋に落ちる仕組みである。
手作りの道具は車椅子の母に持たせて散歩に出た。道具を試すと、すぐにナツメがポケット一杯になった。実は食べて、種は自然公園に撒く。うまく根付けば、10年くらいで実をつけてくれる。

今日は爽やかで、自然公園は親子連れが多かった。
管理棟脇で出合った親子の、5才ほどの男の子は真新しい野球帽をかぶって嬉しそうだった。帽子にはスパンコールで星のマークがついている。
「格好いい帽子ね」と母が褒めると、男の子はニッコリ笑った。
「この子は、気に入るとそればっかりですの」とお母さんが言った。
「うちのも、そうですよ。幼稚園の頃、水兵さんの服が大好きで・・・」
と、私が気に入っていた水兵さんのセーラー服を洗濯したときの事を母は話した。
私は、乾くまで幼稚園へ行かないと言い張り、物干し台の下で乾くのを待っていた。
55年前の出来事を、母親はしっかりと記憶していて、昨日の出来事のように話す。

母が、もいできたナツメをさしあげなさいと言うので、私は大ぶりの実を水洗いして親子にあげた。
「自然のものは美味しいですね」と親子は美味しそうに食べていた。種はそこらに撒くように頼んで別れた。

公園の一角に山小屋風のキャンプ用の炊事棟がある。ピクニックに来た親子達が昼食の準備をしていた。お昼まで時間はあるが、すでに竈に火が入り薪の煙が懐かしい。昔、田舎では食事時になると家々から夕飯を焚く薪の煙が漂っていた。自然の木を燃す煙は甘い香りがする。
役割のない小さな子ども達は椎の木の太い幹に鈴なりにまたがって遊んでいた。今日も樹下には涼しい風が吹いていて気持いい。

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