春の雨の記憶 2005年3月11日
春の雨に洗われた清浄な冷たい空気が心地よい。
毎年のことだが、春の雨の日には九州から上京したての42年前を昨日のことのように思い出す。
芸大の1次試験の発表の日も雨だった。1次は学科で、得意科目の理数は含まれず私は自信がなかった。結果は落選だったが、ショックはなく、毎日、物珍しい東京を歩き回り楽しく過ごしていた。それから、絵描きまで、色々な仕事をして遠回りしてしまったが悔いはない。むしろ挫折も良いものだと思っている。
散歩道の濡れた草木を見ると、昔愛用していた"ぺんてる"のクレパスを思い出す。箱のデザインは広い空と大地の風景画だった。
15歳の頃の春、高校野球の地方大会を見に行った。スタンドの一番高い所に座ると、遠く菜の花やレンゲが咲く風景が見えた。空には雲が流れていて、時折雨が落ちた。その風景は"ぺんてる"の風景画によく似ていた。野球の試合を忘れ風景を見入っていると、突然、遠いレンゲ畑に雷が落ちた。巨大な白い稲妻の柱を今も鮮明に覚えている。
このところ毎晩、夢に昔の女が出てくる。昨夜の女は昔住んだアパートの畳に寂しげに座っていた。しかし、誰だったのか思い出せない。車椅子を押しながら何度も思い返したが分からなかった。ただ、スカートのしわとか、香りとか、感覚的なものは妙に生々しく記憶に残っている。しかし、その生々しさも、帰宅した今は淡雪のように消えてしまった。春の雨の日は、感覚が現実と夢の間を浮遊して、フラッシュバックするように記憶が蘇るもののようだ。
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