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2007年1月31日 (水)

人に手伝って貰うのが嫌いな性分である。2005年10月9日

冷たい小雨で散歩は心地よいが、御諏訪さん横の坂は濡れて滑りやすいので気をつけて登った。
母の車椅子を押し上げるには全身の力が必要で、体をほぼ水平にしてソロソロと押し上げる。そうやって、全身で踏ん張っている時、足音が近づいてきた。私は、まずい、と思ったが遅かった。
「お手伝いしましょうか」の女性の声に顔を上げると、心配そうな20前後の清楚な女性の顔が傍らにあった。
「ありがとう。でも大丈夫です。」と、即座に私は答えた。しかし、女性の手は既にハンドルを掴んで押していた。このケースでは、断られた相手はすぐに離れてくれるものだが、その人は言葉より行動の女性であった。女性の手が私の手に軽く触れ、すぐ傍で女性の良い香りがする。私は不覚にもドキマギしてしまった。
私はとても照れくさくなって、地面を見ながら押し続けた。だから、後のことはよく分からない。ただ、坂上で母がお礼を言い、女性が去って行くのだけが分かった。私は女性にお礼を言い損なったことを後悔しながら、車椅子を押し続けた。

小さな頃から、人に手伝って貰うのが嫌いな性分である。
末っ子だから、みんなにちやほやされて育ったのだろうと、と人にはそう言われるが、そのようなことは絶対にない。可愛がられ愛情豊かに育ちはしたが、何をするにも自分でしないと嫌であった。母の話では、私は2,3歳の頃から、殊にお絵かきしている時は手伝おうとすると烈火のごとく怒る変な子であった。同様に他のこともそうで、かなり頑固な子供らしくない子供であった。だから「お手伝いしましょう」と声をかけられると、正直、どう対応していいのか分からなくなる。

雨の自然公園は静かだった。古民家は係員も見物客も誰もいない。板の間をトントンと歩く自分の足音が大きく聞こえる。座敷に横になると軒先から滴受けの砂利へ落ちる雨垂れの音が心地よく聞こえた。縁側の向こうには雨に濡れた木々が見渡せ、まるで自分の家にいる気分である。時折冷たい風が抜けるが、運動で火照った体には心地よい。
ぼんやりくつろぎながら、行きがけの女性のことを考えていた。彼女は黒い秋物のカーデガンを着ていてデートへ出かける格好ではなかった。もしかすると一人で休日を過ごすのかもしれない。あの時、ちょっと立ち止まって、色々話しかけたら、何か良い展開になったかもしれない・・・などと色々妄想を巡らしていると、いつの間にか雨が止んでいた。私は「あああっ」とため息を呟いて、再び母の車椅子を押し帰路についた。

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