床屋の娘の耳掃除 2005年5月12日
昔の床屋さんは整髪が終わると耳掻きで掃除をしてくれた。
耳掃除後の、羽毛のポンポンでの仕上げはとても心地良かった。
45年前、十条の馴染みの床屋さんで、理髪学校を出たての床屋さんの娘が整髪を手伝い始めた。
彼女に整髪をしてもらうと、耳掃除が下手で外耳道に痛みが走った。
それから軽い痛みが2,3日続いて痒くなった。
市販の軟膏を綿棒で塗ったが、痒みが強くなる一方だった。
結局、自分で治すことは諦め耳鼻科に行った。
「外耳道の皮膚はデリケートだから薬は付けない方が良い。違和感があっても放っておけば自然に治る」
医師はそう言って治療はしなかった。医師の説明では、耳あかは放っておいても自然に排出され、それ自体に殺菌力があるものらしい。言われたように何もせず放っておいたら数日で炎症は治まった。
以来、耳掃除は強く擦らないように気を付けていた。
しかし最近、何となく潔癖に耳掃除を始めた。
すると外耳道に炎症が起きて痒くなった。
耳鼻科医の言葉を思いだとて何もせずに放っておいたら痒みは治まった。
その時、あの床屋さんの娘を思い出した。
美人ではなかったが、色白でグラマーな子だった。
ひげ剃りの時、緊張のあまり近づき過ぎて、胸の膨らみが私の二の腕に触れることがあった。それが楽しみで、娘に当たるのを期待した。
しかし、耳掃除だけは断った。(今は衛生上の理由で床屋さんの耳掃除はなくなった)
床屋の親父さんはその頃売れていた噺家の円鏡にとても似ていた。
面白い人で、深夜、最後の客を送り出すと、すぐに素っ裸に手ぬぐいを腰に巻いただけで「あらよーっ」と隣の銭湯へ駆け込んだ。
今なら問題になりそうだが、当時は誰もが普通のことと思っていた。
私が「あれは変だった」と思い始めたのはつい最近のことだ。
娘が散髪を手伝うようになってから数年後、親父さんが50歳で急死した。
娘はすぐに理髪職人の婿を貰った。
繁盛していた店だったので、近所の男達は、婿さんは店と娘を手に入れ運がいいと話していた。
それから間もなく私は赤羽へ引っ越し、その床屋さんへは行かなくなった。
その頃、長髪が流行り始めて、床屋さんは客が激減していた。
その頃、十条の床屋さんは夫婦仲がおかしくなったと噂に聞いた。
暫くして十条へ行った時、床屋さんの前を通ると閉まっていた。
何でも婿さんが競馬に入れあげ、借金まみれになって夜逃げしたと聞いた。
それから間もなく、隣の風呂屋も廃業してマンションに建て代わった。
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