春間近かに無人の診察室。2006年1月25日
最高気温が10度に達した。それでも平年より低いそうだが、寒さに慣れた体には暖かく感じる。その所為か、自然公園には常連が多く順路のあちこちで話に引っかかり予定時間をオーバーしてしまった。青空が美しい。雪の溶けた地面には既に草が芽吹いて春の気配を感じる。何も良いことは無いのに心が弾む。健康は有り難い。
帰りは駅前に出て天然ブリと舌平目を買った。去年から西京漬を作っていて、漬けていた魚が無くなったので補充する。西京漬は甘口の味噌と味醂、酒を合わせ、適当に魚を漬け込むだけで簡単にできる。生鮭、生鱈、鯖、カワハギ、次々と漬けておいて、焼いて食べる。美味しく漬け込むこつは、切り身を水洗いせずに、酒で丹念に洗うことだ。保存できるので、おかずに迷った時に便利である。自分で作ると、市販のものより安くずっと美味しくできる。
駅前のマツモトキヨシで母の使う貼るカイロと入歯洗浄剤、ビール酵母を買う。次に手芸材料店で布用熱圧着剤を買う。仕事用のGパンの膝が抜けたので裏から友布をあてアイロン圧着するつもり。今時の若者なら、膝穴はファッションだが、私は穴から体温が抜けて心地悪い。
帰り道、いつものように先日亡くなったKさんの小さな医院前を通った。日の光の射す診療室の窓の内側にはまだKさんの魂が彷徨っている感じがする。薄埃に覆われた診察室で「何故、誰もいないのだろう」とKさんが悄然と座っている姿を幻のように感じる。
通り過ぎながら「若いのに可哀想ね」と母はつぶやいた。母はKさんに死に水を取ってもらおうと考えていた。だから、家族を亡くしたような寂しさを覚えているようだ。
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