下北沢で遊んでいた頃。 2006年3月9日
下北沢再開発計画が動き始める気配だ。しかし、役人が立てた商業地再開発で成功例は少ない。道を造り高層建築を誘導しても、人が簡単に集まる訳がない。役人の発想はいつも画一的で貧困だ。街は人と人のふれ合いの中から自然に魅力的に醸成される。役人の考える近代的で明るい街は意外に寂しい。
下北沢には以前は毎週のように遊びに行っていた。終戦後の闇市から続く古いマーケットを抜けて、雑然とした商店街を行くと、踏切近くに行きつけの店「ネバーランド」があった。壊れかけた狭い階段、段ボールで蓋をした破れた窓、知らない人が見ると、廃屋のような店である。私が通ていた頃はいつも黒猫が店番をしていた。安い店なので、客は舞台関係の者が多かった。
私は深夜まで飲んで、タクシーで帰る事が多かった。これが大変で、環七や山手通りに出るまで、道に不案内なタクシーへの指示に大変苦労した。今回の再開発はその道路事情の解消も目的なのだが、実際はそれに名を借りた不必要な大改造に見える。築地市場も移転して近代化するようだが、人間臭い街が消えて行くのは寂しい。
しかし、下北沢に通っていた頃に懐かしさは無い。劇団7曜日の宣伝美術をやっていて、今の仕事の基本が出来た時期であるが、当時の私自身の人格は軽薄で思い出すだけで恥ずかしくなる。もっとも、若い人には軽薄な私の方が気楽に付き合えるのかもしれないが、私は戻りたくない。
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