母は最近、簡単な言葉が思い出せない。2006年9月10日
川越の新河岸川でアザラシが見つかった。怪我をしていて保護された後上野動物園へ引き取られて行った。新河岸川の下流は我が家の眼下を流れている。とすると、私たちが知らない間に、そのアザラシは上流へ向かって泳いで行った訳だ。
母に話すと、泳いで行く姿を目撃出来なかったことを残念がっていた。しかしアザラシは人目を避けて真夜中に泳いで行った訳で、都内に目撃者はいない。
今日の散歩中、母は食欲が無いことを訴えていた。食道を痛める骨の薬を服用しているので、粘膜が荒れているのかもしれない。あるいは、肝臓ガン起因かもしれない。いずれにしても、医師に対処しようがないことが私に出来る訳がなく、訴えられても辛いだけだ。
昼食前、試しに漢方胃腸薬を飲ませたら、少し食欲が回復した。それならと、以前、医師に処方された抗潰瘍薬があったので、夕食後飲ませてみた。もしそれで改善が見られるなら、少しの期間続けようと思う。しかし、母の飲む薬の種類が多いで、あまり飲ませたくはない。
9月11日
昨夜、何かが足の上を這い回る感触がして飛び起きた。明かりを点けると、大きなゴキブリが逃げて行く。こいつに出会うのは、こちらへ引っ越して来てから2度目である。窓や玄関を開け放って生活しているので、外から入って来たようだ。すぐに逃げた隙間に殺虫剤を噴霧したが、蚊や蠅用の弱毒性で、奴には効かない。
その後、二度寝できず、午前3時過ぎ母の睡眠薬を飲んでやっと寝入った。
今日の自然公園では、若者グループがバーベキューの準備をしていた。しかし、彼らは備長炭に火をつけることができない。。下から、固形アルコールの火で熱しながら、上から下へ扇いでいるのである。それではアルコールの火を炭から追いやることになり、火はつかない。大勢で手引書を開いて考え込んでいる若者たちを、母と椎の木の木陰から眺めていたが、我慢出来なくなって手伝いに行った。
「上から扇いではだめだよ、暖められた空気は対流で上に流れるものだから、」と言いながら鉄缶の炉の炭を外へ出した。それから、鉄缶に枯れ草を丸めたものと枯れ枝を入れ、その上に炭を置いた。枯れ草は朝の雨で湿っている。しかし、下からアルコールの火で熱すると、枯れ草と枯れ枝は燃え上がり、すぐに炭に火がついた。我々の世代に簡単なことが、若者には難しいようだ。
帰りは、ゴキブリホイホイを買いに駅前へ出た。
途中、赤羽台下にある亀池弁財天へ詣りたいと母が言った。しかし、母はその亀池の「カメ」がどうしても言葉に出ない。私は、もしもしカメよかめさんよ、をカメ抜きで唄って聞かせた。母は小声で唄い始めた。しかし「もしもしクマよ、クマさんよ」と、どうしてもカメが出て来ない。母は次々と動物の名前を当てはめながら唄っていた。そして、弁天様に着く頃、やっと「カメ」を思い出した。
母は最近、簡単な言葉が思い出しにくくなった。軽い惚けのようだ。
5月頃、鬱状態になった頃からその傾向が強い。迫り来る死への不安が、母を惚けに追いやっているのかもしれない。以前、知人の医師が、老人の惚けは、神が与えてくれた有り難い生理現象だ、と話していた。それがあるから、老人は死を静かに受け入れられる。私は、この程度の惚けなら無理に直さないでおこうと思っている。
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