不意に、呼び止められて金木犀 2006年9月21日
爽やかな日だ。もう夏日へ戻る事は無いだろう。
街のここかしこで不意にキンモクセイが香る。辺りを探すと、茂みの奥まった所にオレンジ色のキンモクセイが咲いている。「また、今年も咲きましたよ。」と楚々と語りかける風情は懐かしい人に再会したような心地。
緑道公園で毎朝出会う顔馴染みの老夫婦がいる。共に、穏やかで礼儀正しい。今日は夫人だけだったので「ご主人は、どうされました。」と聞くと、「あちらで知り合いに引っかかりまして、」と夫人は笑顔で指差した。桜広場を通りかかると主人はベンチで知り合いと話している。挨拶すると、主人は律儀に立ち上がり帽子を取って丁寧に挨拶した。このささやかな日常に平和さを感じる。
今日は自然公園は早く切り上げ、駅前に買い物へ出る予定だが、そんな日にかぎって知人に会う。管理棟前でその人と母が世間話をしている間、私は椎の木の木陰で休んだ。
10時半に公園を出て、赤羽台団地を抜けた。
長い間、団地一角で建て替え工事をしていたが、完成して入居が始まった。連日引っ越し荷物を満載した業者のトラックが到着する。入居者の晴れ晴れした顔が幸せそうだ。
立て替え前の古い団地を抜け赤羽台の急坂を下ると亀池弁財天。いつものように商売繁盛を願い駅前のユニクロへ寄った。母の秋物のシャツを3着とカーディガンを買った。シャツはアメリカのシェーカー教徒の女性が身につけているような小さな花柄。明るくて爽やかな色合いである。男物のLサイズはゆったりしていて丈夫で、母の好みである。
その後、市場で鯛の頭を買い、お昼は兜煮を作った。
母の体調は弱ったなりに、落ち着いて来た。急激に弱られるのは辛い。出来る事なら、緩やかな階段を下るように、老いてくれる事を願う。
180センチ×120センチの作品を描いている。絵は順調に進行していたが、キャンバスの肌合いが不満になった。
今回は、生キャンバス=グランドを引いていない麻布=にプレパレーションから幾層にもグランドを重ねた労作である。しかし、肌合いのムラが気になる。色々手を加えれば、修正できるが、次に修正跡が気になり始める。そんな時は思いっきり、始めからやり直す方がすっきりする。幸い、まだ下絵の段階なのでダメージは少ない。
傍目には時間の無駄に見えるが、絵はそう言うもので、1ヶ月かけて描き込んだ作品を破り捨てることもある。明日、生キャンバスを買って来ることにした。今度は失敗の経験を生かして、気に入った肌合いを作る。
散歩道の本屋さんのブーちゃんが死んだ。チンチラの可愛いネコで、いつも玄関のガラス戸の内側から外を見ていた。声をかけると嬉しそうに返事をするので、通る都度母と私は声をかけた。
小さな動物の命は短い。最後に見た時は元気がなく、その後姿が見えないので気になっていたが、先日小次郎ちゃんのお母さんから死んだ事を聞いた。
一昨日、飼い主に会ったので「お気の毒に」と声をかけたら、涙ぐんでいた。この辛さはよく分母は相変わらず腹が張ると訴える。何か腹の中にあるのだろう。しかし、顔色は良いので、今のところ心配はしていない。ただ、突然の激変は覚悟している。
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