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2007年3月29日 (木)

「お父さんは、強くて偉い。」男の子は誇らしげだった。2006年9月2日

今日も涼しい。母は厚めの藍の型染めの上着を着た。昔の中国製手織りで厚く堅牢で百年は持つ品である。散歩の行きがけ、顔見知りの中国残留孤児の母子に会った。挨拶して来たので、「この上着は中国の布だよ。」と教えたが、意味が分からない様子だった。

昨夜、風が吹いたのか、桜の黄色い枯れ葉が沢山落ちていた。秋の気配が更に増したようだ。自然公園の歩道にミズキの実が枝ごと落ちていた。枝別れした紅色の軸に5ミリ程の丸い薄緑の実がついている。見事な造形で、拾って壊れないようにそっとリュックにしまった。

今日も管理棟前のベンチで車椅子のOさんたちに会った。
「涼しいのは良いけど、日が短くなって行くのは侘しくて厭だね。」Oさんが言った。それからOさんは公園仲間のIさんの消息を話した。Iさんはいよいよ寝たっきりになって、老いた奥さんでは世話が無理なので、有料特養ホームを探しているらしい。
「家の周りは、いよいよ寝たっきり通りになっちまった。」Oさんはそう言って笑った。

母をOさんたちの所へ置いて、私は椎の木陰へ移った。
目の前の炊事棟では親子のグループが野外炊飯をしている。皆若くて楽しそうだ。
その中に生成りのTシャツにジーンズのお母さんがいた。黒髪を後ろで纏めて、すっきりした色白の襟足が美しい。私は椎の木に持たれて彼女を眺めていた。眺めていると、昔の女を思い出して、胸の奥がツーンと痛くなった。どうやら、老人の世界に長く居すぎたようだ。

古民家は子供たちで賑わっていた。
「奥の納戸を開けてみな。まっくろくろすけがいるよ。」子供たちに教えると、子供たちは怖々納戸を覗いた。そして「くろすけがいたーっ。」と大喜びしていた。

休んでいると、古民家の係員が片付けもの始めた。天井裏へ梯子をかけ、要らないものを持ち上げるのだが、皆、老人ばかりで危なっかしい。手伝おうと思っていると、一早く、見物の若いお父さんが手伝いを申し出た。長身の彼が手伝うと10個程の段ボールはアッと言う間に片付いてしまった。その後、老人達のお礼に見送られ、若い親子は爽やかに帰って行った。

帰りがけ、その親子に会った。
「お父さんは、強くて偉いね。」お父さんに手を引かれた4,5歳の男の子に言うと、誇らしげな顔をした。若い両親も、褒められて、とても嬉しそうだった。だれでも、感謝されるのは嬉しいものだ。

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