古びた化粧箱に屠蘇セットをしまった。2007年1月7日
朝食に七草がゆを作った。美味くできて、母は珍しく食が進んだ。昨日と打って変わり好天で、玄関から、雪煙を上げる富士や雪の雲取山がくっきりと見えた。
自然公園へ行くと、今朝食べたばかりの、ハコベ、ナズナ、ホトケノザが日溜まりに群生していた。今朝食べた七草は買って来た品だが、昔は身の回りで調達出来ていた。
帰宅してから、陰干ししていた屠蘇セットを箱にしまった。
屠蘇セットは30年前に父が買って来た品だ。父は昔から、金が入ると自分の贅沢に使うだけで、家族の為に使う事は殆どなかった。だから、それは数少ない父の遺品である。
父の生涯は事業を興しては倒産の繰り返しだった。父は働き者であるが、甘やかされて育ったので詰めが甘く、肝心の所で仕事を投げ出し、いつも失敗していた。
父の生活が安定していたのは、建設省土木技官として国策工事に関わっていた戦時中である。母の気持ちも安らかで、その頃生まれた私は伸びやかに育った。
私は末っ子なので、甘やかされて育ったと思われている。
しかしそれは全くなく、むしろ、小さい頃から人にかまわれるのが厭だった。自立心強く育ったのは、父の生き方を反面教師として育ったからだと思っている。
我が家の生活を支えていたのは母だった。
母は苦労を愚痴ったりはしなかったが、私は真実を見抜いていて、子供心に大きくなったら母を楽させようと思っていた。しかし、いいかげんな父を粗末には扱っていない。粗末に扱うには無駄なエネルギーを労し、疲れるだけだからだ。
お昼前、窓際の日射しの中で古びた化粧箱に朱色の屠蘇セットをしまった。
これから何度、その作業を繰り返すのだろうか。来年もその容器で母は屠蘇を飲めるだろうか。箱にしまいながら、そんなことを考えていた。明日は玄関の松飾りと小さな鏡餅を片付ける予定だ。
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