背中の痛み。2007年2月11日
目覚めると背中が痛い。風邪を引きかけていると思い葛根湯を飲んだ。
背中の異常感は数ヶ月前から続いている。いつもの癖で、中皮腫、肺がんと最悪の事態を案じた。そう考えるのは、絵描きに転職する前に彫金をしていた頃の同業者が肺ガンで亡くなっているからだ。
その人は肺ガンと診断される4,5年前から、背中の違和感と咳を訴え十條の大学病院にかかっていた。病院の診断は気管支炎で、漫然と治療が続いた。
その頃、私は彼と話していて息の異臭に気付いた。それは、寝不足や胃が悪い時とは違う異様な生臭さだった。後で思うと、気管支ガンからの出血や壊死した組織の臭気だったようだ。
だが、大学病院の担当医は血痰が出ても痰検査をせず、その内治ると漫然と気管支炎の治療を続けていた。だから、私も彼も、まさか肺ガンとは夢にも思っていなかった。
しかし、病状は悪化し続けて、ついに肺炎を起こした。家庭医に往診してもらうと、すぐに築地ガンセンターへ紹介された。しかし、すでに手遅れで、放射線と抗がん剤治療をしたが好転せず、2年後に埼玉の民間病院で亡くなった。
私と彼は彫金の仕事で断熱材のアスベストを使っていた。私と違うのは、彼はヘビースモーカーだったことだ。アスベストにタバコが加わると、発がん性は著しく増悪する。
彼が肺ガンと診断された昭和50年頃は、一般にアスベストの危険性は認識されていなかった。しかし私は僅かながら知識があり、慌てて身の回りのアスベストを代替え品に変えた。それから潜伏期の30年は過ぎた。もし、私にガン素質があるなら、肺ガンも中皮腫もいつ発症してもおかしくない。
アスベストは特殊な物質と誤解されているが、実際は違う。アスベスト粉塵は太古の昔から空気中に自然に存在するもので、総ての人は日常的に吸っている。たとえば平成19年の環境省調査では、離島から都市部まで、1立方メートルに200〜400本は存在した。その汚染した大気を吸っていても大半の人は何の障害もなく一生を終わる。たとえば、アスベスト起因の胸膜肥厚と呼ばれる石灰化した病変は老人なら殆ど全員が持っている。だが、規制前の汚染地で大量吸入した人は、明らかに中皮腫と肺ガンが顕著に発症している。
そんな事を考えながら、母の車椅子を押した。
昨夜は雷鳴が聞こえた。出かけに、玄関前から雨風に洗われた美しい青空の下に真っ白な富士が見えた。緑道公園では満開のロウバイを見つけた。
自然公園は冷たい風が吹き、人影は少なかった。私には冷たいが清涼な風が心地良く、いつの間にか背中の痛みは消えていた。数ヶ月続いていた背中の異常感は寝不足やストレスの所為だったかもしれない。
九州の兄からの葉書に、遠縁の者が危篤と書かれていたと母が話した。
彼は糖尿病起因の網膜症で失明し、両足を壊疽で失い、感染症で苦しんでいる。末期の苦しさを予期して、厳しく節制していたなら天寿を全うできたのに、残念でならない。病は治療するより、予防する方が遥かに容易だ。
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