寄稿文の代筆を頼まれた。2007年4月11日
1年足らずで、自然公園の老人達の顔ぶれの大半が入れ替わった。
その顔を見せなくなった中の一人、Iさんが、先日電話をして来た。彼女は80歳近くで、介護するに体力の限界を感じ、ご主人が介護施設にいれた。しかし、Iさんは長年家族の為に働いて来た夫を施設に入れたことを悔いていた。最近はその悔恨がいつも頭から離れず、心臓の調子がおかしくなったようだ。
「奥さんは介護されても良い年齢です。誰も酷い人とは思っていませんよ。」と慰めると、Iさんの声が明るくなった。母と電話を代わると、「今度是非、自然公園でお会いしましょう。」と母が話す声が聞こえた。しかし、彼女は公園へ来ない気がする。事情を知らない顔馴染みに、ご主人を連れて来ていない理由を説明するのは辛いことだ。
夕食前、母は「試してガッテン」の再放送を見ていた。メタリボリックがテーマで、女性の胴回り90cm以上の指摘が気になるようだ。母の胴回りはそれを大幅に上回っている。
「内蔵脂肪がかなり多いから、早死にするよ。」と脅かすと、「94歳なら早死にだね」と母は笑った。
夕食後も母はテレビを見ていた。少し、元気になったのかもしれない。内容は中国の偽物商品の特集である。「いいかげんな国民だこと。」と母は憤りながらも楽しんでいた。番組の途中、巨大なサメが出るCMが入った。サメに追いかけられた若者が、必死の形相で甲板に這い上がると、乗員達は若者の息が臭いとのけぞる。直ぐ傍に迫って来たサメものけぞって腹を上にひっくり返ってしまう。口臭防止剤のCMなのだが、母は「ずいぶん酷い口臭だこと。」と真に受けていた。「本当だと思ってるの。冗談なんだよ。」と言うと、「分かってるよ。」と母は言い訳をした。話しているうちに、やっと冗談と気付いたようだ。
6時過ぎ、母はベットに腰かけて寝る準備をしていた。私はベット脇に睡眠薬のレンドルミンと咳止めのムコダインを置いた。昨夜は飲む順序を間違えて、睡眠薬を先に飲み、朦朧としたまま咳止めを飲んでいた。
再度、間違えないように順番を記入した薬を母の部屋へ持って行くと、献体の白菊会会報への寄稿文の代筆を頼まれた。
母は文章を書くのが好きで、毎年、原稿用紙に楽しそうに書き込んでいたが、去年辺りから、書くのが疲れるようになった。毎日の散歩の時、色々な昔話を聞かされているので、それらを纏めて代筆しようと思う。締め切りは7月で、出版は年末になる。
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