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2007年5月14日 (月)

輪投げ。07年5月14日

自然公園の管理事務所前に椎の巨木がある。
私たちより遅れてやって来た保育園児達がワーと歓声をあげて椎の巨木へ駆け寄って行った。椎の太い幹は根元辺りから地表を這うように伸びていて、小さな子供でも容易に木登りができる。子供たちは幹に鈴なりになって遊んでいた。子供たちが楽しそうなのは、人が猿だった頃の記憶を、大人より多く留めているからかもしれない。

子供たちがにぎやか過ぎるので、管理棟前から古民家へ移動した。
いつものように、前庭で母に輪投げをさせてから、古民家の土間で休んだ。
外を眺めていると、輪投げに老人が近づいて行くのが見えた。
輪投げはボランティアが自然木とロープで手作りしたものだ。老人はロープで作った輪から、慎重に緑色の輪だけ選んだ。そして、輪の受け台から歩数で距離を計って、投げ位置を決めようとしていた。しかし、位置がなかなか決まらない。老人は再び台まで戻り、歩数を計った。
「いつまで計っているんだろ。」眺めていた母がイライラしながら言った。
老人は5度目の計測で、やっと投げ位置を決めた。しかし、輪投げをしようと構えるだけで、なかなか投げない。
「グズだね。上手いかどうか、確かめてから帰りたいのに。」母が再度文句を言った。
「声が大きいよ。」と言ったが、「聞こえてもかまわない。」と母は平気である。更に「あんな、杓子定規な人は大嫌い。」と言いたい放題だ。
老人はしばらく輪投げのフォームを悩んでいたが、意を決して投げた。これまでの慎重な準備から、相当の上級者と思っていたが、輪は受け台の手前や左右に大きく外れて落ちた。
私は笑いを押し殺しながら、母の車椅子をぐいっと押し出した。
帰り道「私より相当下手だったね。」と母は嬉しそうに話した。母が口が悪い時は元気な証拠である。

予報通り、散歩帰りには日射しが遊歩道を照りつけ眩しかった。路傍には燕麦が実り、落ちた実をスズメ達がついばんでいた。平和な初夏の風景の中を車椅子を押すのは楽しい。緑道公園の木々のトンネルに入ると爽やかで、更に幸せな気分になった。

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