野イバラの道に揺れ行く白パラソル 07年6月13日
早朝から動き続けて午後2時、20分だけ仕事部屋で午睡を取った。目覚めると、枕元を吹き抜ける風が心地良い。明るい窓を見上げながら、とても平和だと思った。私が置かれた状況は穏やかさにほど遠いのに、何故か限りなく平和である。
暑くなってから、散歩は朝8時に出るようにしている。埼京線北赤羽駅へ向かうサラリーマンたちを避けながら、桜並木から緑道公園へ入ると爽やかで静寂そのものだ。
自然公園に着くと、入り口前の広場の東屋に老人達がたむろしていた。「今日も、お元気ですね。」老人達が母に声をかけた。この、どこかチョイ悪の老人達はいたって明るい。この明るさは、郷里日南の老漁師達の雰囲気に似ている。そう思うと、夏日射しに照らされた広場が漁港の岸壁に思えて懐かしくなった。
遊歩道の野イバラは今が満開である。管理棟で、母にトイレを使わせた後、いつものように椎の木陰で休んだ。暑くなってから、馴染みの老人達は半減した。互いに健やかに秋に再開出来れば良いのだが。
古民家前の田圃で、大きくなったカルガモのヒナ達はせっせっせ草取りに励んでいた。熱心な老人達が数人、親子ガモを見守っている。母カモは田圃の畦で片時も休みなく周りを警戒している。この慎重さのおかげで、彼女はヒナを3羽育て上げることができた。
古民家で一休みしていると、「素敵な薔薇ですね。」と、おばあさんが母の帽子飾りの造花を褒めた。「薔薇は大好きです。」と母は嬉しそうだ。散歩コースは顔馴染みが多く、人付き合いは田舎と変わらない。田舎との決定的な違いは、顔馴染みたちの名前も住所も知らないことだ。この都会の距離感は心地良い。
昼食後、洗濯をしてベランダに干した。白く洗い終えたTシャツやタオルを干す指先に、雲が流れる青空が見えた。乾いた風にはためく洗濯物を眺めていると幸せな気分になる。この分では1時間程で乾いてしまう。母を抱えての厳しい生活の中、この一瞬の平和は心に染み入る。
半袖にしてから、両腕に紫外線止めをたっぷり塗っているが、まったく効果がなかった。どうやら、塗り方が間違っていた。今日から、パタパタと盛り上げるように塗ってみると、赤くもヒリヒリもしない。これで、何とか今年の猛暑を乗り越えられそうだ。
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