夏の白昼の精霊達。07年6月7日
晴れたかと思うと重い雲が空を覆う。にわか雨が降るとの予報を信じて、雨具一式を持って母の散歩へ出た。湿気が多く日射しが戻ると蒸し暑く、車椅子を押すには厭な日である。
緑道公園で、無数のムクドリが激しく鳴きながらカラスを追いかけて行った。よく見ると、カラスはムクドリをくわえている。弱った仲間がやられたのだろう。この仲間意識の強さのおかげで、彼らは東京で生き残っている。
緑道公園の陸橋の上に顔馴染みのカラスがいた。彼は鉄の手摺の上にクッキーを置き、食べようと砕いていた。「こんにちわ。」と声をかけると、少し頭をかしげ目をクルクルさせた。
彼らは弱った小動物を餌食にする獰猛さの反面、そのような人懐っこさを備えている。
自然公園の管理棟で母にトイレを使わせた。待つ間、雲が少し晴れて強い日射しが照りつけた。暑いと水分が体表から蒸発するので尿量は減る。母は「ほとんど出ない。」と言いながら出て来た。
日射しを避けて椎の巨木の下で休んだ。木陰は涼しい風が吹き抜け別世界の心地良さである。巨木の下にいると野の精霊達を感じる。ふいに小川芋銭の絵「樹下石人談」が思い浮かんだ。それは白昼、奇怪な巨木の下で石人達が何か話している図である。始めて中学の教科書で見た時、衝撃的な感動を覚えた。以来、小川芋銭は私が一番好きな日本画家になった。私は絵に関しては先人に敬意を払う事は少ないが、唯一彼だけには敬意を払っている。
小川家は牛久藩士族で維新後は江戸から牛久に帰農した。しかし、病弱な芋銭は農家出の頑健な妻をめとり家業を任せて、旅と画業に明け暮れた。妻は極めて元気な人で、夫に好きなようにさせながら、5人の子供を育て上げた。芋銭は家庭的にも幸せな人であったようだ。
彼の絵で好きなものに「待鶏鳴」がある。夜明け前、巨木の枝枝に沢山の鳥達がとまって朝を待っている図である。彼は河童の絵で有名だが、鳥や野の精霊達もとても良い。彼らのギョロリとした目は雅味があって可愛い。ドイツの画家ゾーヴァはそれらと似た表情の動物達を多く描くが、もしかすると彼は小川芋銭を知っているかもしれない。
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