懐かしいアーチ式石造りの乙姫橋。7年6月18日
東京北社会保険病院で、母の眼科の定期検診日である。
最近、緑内障は安定しているので直ぐに診察は終わった。自然公園での顔馴染みのおばあさんも、毎月同じ日に検診を受けている。先月会った時、「また、来月お会いしましょうね。」と母は約束して別れた。しかし、その方の姿が見えない。自然公園でも最近会っていない。支払いの待ち時間に母に言われて、待合室を探してみたがいなかった。とても元気な方だが、暑さで体調を壊したのだろうか。大事無ければ良いのだが。
母は「男はつらいよ」シリーズを見続けて、今日は45作の「寅次郎の青春」を見ていた。
舞台は郷里隣の港町、油津で、冒頭にアーチ式石造りの乙姫橋が出た。昔は油津と大堂津以南の地域を結ぶ重要な橋で、周りの街も賑わっていた。しかし、今は港寄りに立派な橋が出来て、周りの街は寂れ場末の橋になってしまった。
小さな漁師町大堂津で育った私には、隣町の油津は大都会に思えた。映画好きの母はよく私を連れて油津に話題の洋画を見に行った。当時の洋画の名作やゴジラの初回等、総て私は油津で見ている。夏の頃は、映画帰りにハイカラなミルクセーキや青や緑のソーダー水を飲ませてもらった。今、多感な子供時代に見た映画のシーンと油津の街並は渾然と一体化して記憶の一部になっている。
当時の油津の商家は明るいペンキを塗ったコロニアル風の建物が多く、私は好んで無国籍のコロニアル風の絵を描く原点になった。上の作品「時は静かに過ぎ行く」の右手のアーチ橋のモデルは乙姫橋である。そして、岬の向こうに描かれた島は大堂津沖合にあった大島である。私の描く海の絵は総て当時の記憶が元になっている。
母は「寅次郎の青春」の風景を懐かしそうに見入っていた。45作は御前様役の笠智衆の遺作で、46作からは登場しない。シリーズは4作を残すだけになった。ふいに、母は最終作を見終えると気落ちするような気がした。しかし、それは気の回し過ぎかもしれない。母は私程にセンチメンタルではなく、淡々と現実を受け入れているのかもしれない。
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