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2007年7月26日 (木)

昼顔の見つめる先に白い道 07年7月26日

蒸し暑い日で、散歩中は絶えず母に水を霧吹きした。まるで盆栽の手入れみたいだ。
緑道公園で立ち止まって、車椅子の母に霧吹きしていると、通りかかった知らない老人が「蚊が多くて大変ですね。」と声をかけた。虫除けスプレーと勘違いたようだ。ただの水で涼を取るために霧吹きしていると答えると、怪訝な顔をした。「試しに、少しかけてあげます。」と腕辺りに少し霧吹きすると「本当だ、涼しいや。」と喜んでいた。そして、そんな便利な器具は何処で買えるのか、と聞いた。
私が使っているのは寝癖取り用の水が入っていた容器である。持ち歩くのに大きさも手頃で、丸みを帯びたデザインも良い。対して、アイロンがけ用の専用霧吹きはボタ落ちが多く具合が悪い。一通り話すと、「良い知識ができました。」と喜んで去って行った。

自然公園の老人達にも霧吹きでの涼の取り方を教えている。試しに少し霧吹きすると、「涼しい。」と感心し、それは何処に売っているかと聞く。男達の多くは霧吹きとは縁がないようだ。園芸用霧吹きを知っている者はいるが、あれは持ち歩くのにごつすぎる。

そう言えば、緑道公園にも東京北社会保険病院下の公園にも蚊はいない。手入れが良いので、蚊の発生源は徹底的に除去されている。
東京北社会保険病院下の公園の緑陰にはテーブルとベンチが設置してある。暑くなってから、隣の立ち飲み酒店の客達はそのテーブルを囲んで飲んでいる。近くに新しい公衆トイレがあり、蚊もいないので快適に飲めそうだ。今日も、同じメンバーが静かに酒を飲んでいた。皆、飲んでいる時は、これ以上の幸せはない、と言った顔をしている。
「みんな、命が短くなっても、酒は止められそうにないね。」
と言うと、母は父親健太郎のことを思い出していた。

健太郎は酒好きで、医師に「死ぬから飲むな。」と言われても、死んでもかまわないと飲み続け40歳と少しで急死した。
その朝、「腹の辺りが重苦しい。」と言って健太郎は寝ていた。祖母は気遣いをしない人なので、母が代わって看病していた。午後、「何だか、すーっと楽になった。」と健太郎は言って、傍らの引き出しの取手をカタ、カタ、とさせ始めた。母が部屋を出てもしばらく、カタ、カタ、と音が聞こえていたが、突然静かになったので、胸騒ぎして見に行くと、亡くなっていた。食道辺りの血管が破裂しての出血死のようだ。彼はまさしく酔生夢死であった。

昼顔の見つめる先に白い道

遅れて来た夏に、自然公園の老人達は少なくなった。
遊歩道には殆ど人影がない。古民家の生け垣で、昼顔の薄桃色の花が微風に優しく揺れていた。天気予報では曇りと言っていたが、薄雲を透して射す陽光は強い。私は何度も立ち止まっては母に霧吹きをした。車椅子を進めると、風で湿った衣服が冷やされ、とても涼しいと母は言う。この器具のおかげで、今年の夏も母は乗り越えてくれそうだ。

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