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2007年9月18日 (火)

録画した「かもめ食堂」を鬱気味の母と見た。07年9月18日

朝、母は気分が悪いと言って、いつものアイスクリームを食べなかった。それは抹茶とオリーブ油を加え、栄養バランスを良くした高カロリーのアイスクリームである。母は体調が低下した時でも、アイスクリームだけは食べてくれて、体力維持に役立っていた。原因は胃腸肝臓の内科系以外に老人性鬱も考えられる。

散歩途中、大型犬の小次郎君に会って、母の気分は少し良くなった。緑道公園へ入ると次々と顔馴染みに出会う。「顔色が良くて、とてもお元気そうですね。」と、声をかけてくれる人もいて、母は更に元気になった。気分の悪さは鬱によるものかもしれない。毎年、季節の変わり目に母は鬱傾向を示す。今朝の涼しさは私にとっては気分が良いが、母には鬱のきっかけになったようだ。

自然公園からの帰り、駅前へ出た。途中、脱力感があり車椅子を押す力が抜ける。朝、母がアイスクリームを食べなかったのに私も付き合い、燃料切れを起こしたようだ。

昼食後、昨夜録画しておいた「かもめ食堂」-2006年、荻上直子監督、群ようこ原作-を見た。舞台はフィンランドの港町ヘルシンキ。港町は世界のどこでも同じ空気を感じる。ノスタルジックな町並みと埃のない透明な風。そして、旅人が佇みたくなる静かな岸壁。冒頭に太った可愛いカモメが写ったが、我が家近くのカモメたちより二周りは大きかった。

「かもめ食堂」はヘルシンキの裏通りにサチエ(小林聡美)が開店した小さな店である。日本人の店だからと言って、赤提灯や暖簾は下がっていない。北欧風のシンプルで明るい店で、通りに面した広いガラス窓からは日の光が柔らかくテーブルを照らしている。メニューはシャケおにぎりに和風の洋食が付く。しかし、客は無料サービスのコーヒーを飲みに来る漫画オタクのフィンランド青年1人だけ。だが、焦らず明るく健気に働くサチエの明るさと清潔感は心を打つ。
やがて、その「かもめ食堂」を旅行者のミドリ(片桐はいり) と マサコ(もたいまさこ) が何となく手伝うことになる。 ミドリは仕事か恋に疲れ、ムーミンに惹かれて。そして、マサコは20年間の両親の介護から解放されての一人旅。だが、女性たちは声高に悲歎したり人生を語ったりはしない。淡々と穏やかに、小さな出来事を交えながら「かもめ食堂」で働く。
映画の中で、ふいに顔をのぞかせる彼女たちの過去が、嫌みなく物語の陰影を深めている。静かな夏の北欧の港町に、抑制の利いた三人の女の過去が淡く滲む空気感がしみじみとして、とても良い。これは私が最近見た映画の中で、出色の佳作である。

主題からそれるが、「かもめ食堂」の中で片桐はいりが小林聡美に「人類最後の日に何をしますか。」と聞くシーンがあった。映画の中では明快な答えはなかったが、私なら、ただボーッと何もしない。もしそれが巨大隕石の衝突なら、自然公園の草地に寝転がって、近づいて来る巨大な火の玉を眺めているだろう。

「かもめ食堂」を一緒に見終えた母は、「とっても良い映画だったね。」と言ってトイレへ向かった。母は朝から、小用がきわめて少ない。気分が悪いのは、鬱だけではなく、腎機能低下も影響しているのだろう。その原因を特定したところで意味はなく、老いが更に進行したと言うことだ。小用は夕暮れまで殆ど出なかった。トイレからベットに向かう母の後ろ姿に一段と老いが増して見えた。

夕暮れから秋の涼しさになり、長袖のシャツを着た。昨日までの暑さにうんざりしていたが、現実を麻痺させる利点もあった。突然に頭が冴えて、現実が明瞭に見えるのは侘しいものだ。

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