闘志だけでは世の中は渡れない。07年9月27日
朝食前、母は暗い顔で椅子に腰かけていた。声をかけても、はっきり返事をしない。秋風の所為で、また鬱になっているようだ。母の鬱は散歩をさせれば大抵解消する。しかし、今日は午前中に入浴介助サービスを受ける日で、散歩は休む。元気にさせようと、1本残っていた強壮ドリンクを飲ませた。母は暗示にかかりやすいので、これで元気になってくれるはずだ。それから、薄い夏用寝間着を秋用に着替えさせて、ベットへ連れて行った。
30分ほど原稿書きをして、母の様子を見に行くと横になったままテレビを見ていた。「大丈夫。」と聞くと「大丈夫よ。」と、明るく答えた。ドリンク剤が効いたようだ。
朝食後、ヘルパーの女性が訪ねて来た。彼女は入るとすぐに、私の彫刻「雲おやじ」の写真をくれた。先日、友達と荒川河川敷の設置場所を訪ねたようだ。彫刻は先日の大水の被害もなく無事だ。久しぶりに「雲おやじ」を見ると、制作した頃を思い出す。それほど昔ではないのに、遠いことに思える。
入浴介助が終わった後、私は散髪へ出かけた。東京北社会保険病院下の公園を通ると、いつもの老人グループがテーブルで酒盛りをしていた。手を上げると気づいて「よっ。」と一斉に手を上げた。一人が「どうしたんだ。」と母のことを聞くので「散歩は休み」と答え、先を急いだ。
先客はなく直ぐに散髪してもらえた。11時半に終えて帰ろうとすると「これ、お母さんに。」と奥さんが手作りのイチゴジャムをくれた。色々辛いことがあるので、気遣いに胸の奥が熱くなった。この地域の人たちの温かさに比べ、仕事は冷たい。今進行中の本の企画は挫折しそうな気配だ。どうやら、担当編集が根回しに失敗した様子だ。その大手出版社でも内情は厳しい。没の気配のせいで、担当からの原稿へのクレームがなくなった。
昨日あたりから企画からの撤退準備に入っている。準備と言っても、デイスプレーに並んでいた原稿のエリアスをゴミ箱へ捨てるだけだ。大きい心の整理は慣れているので、数時間で終了した。
昼食後、母を散歩に連れ出した。静かな緑道公園を車椅子を押しながら母に話した。
「本の仕事はぼつになりそうだ。期待させておいて、ごめんね。」と言うと「そう、また良いことがあるよ。」と母は慰めてくれた。
他にレギュラーで2年間続けていた仕事が12月で終わるが、それは母に話さなかった。それでも私の闘志は少しも衰えていない。しかし、老いた母に厳しさを味合わせるのは辛い。
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