書き文字で分かる脳梗塞の予兆。07年10月17日
月曜日は母の眼科だった。最近の東京北社会保険病院は混雑するようになり、診察まで1時間近く待たされた。私は混むのを予想し、強壮ドリンクを飲ませておいたので母はさほど疲れは訴えなかった。空いていれば助かるが、それでは病院存続が難しくなり却って困る。病院黒字化のため派遣されている知人の話では、今の混み様でもまだ経営安定には厳しいようだ。
診察の結果は緑内障の進行はなく、視力が少し良くなっていた。事前に飲ませた強壮ドリンクのおかげで、毛様体の働きが良くなり、ピント合わせが上手く行ったのだろう。母を待たせたくないので、来月の予約は朝一番に頼んでおいた。我が家から10分の距離はとても助かる。
先月の眼科診察では、母は長時間神経を集中させる視野検査を受け疲労困憊していた。その帰り道、来年の視野検査は止めようと母に話すと、「来年まで、生きているかどうか分からない。」と、いつになく気弱なことを言った。「まさか、死ぬことはないよ。」と言うと、母は黙っていた。
最近、母は死を身近に感じるようだ。それは、長命の老人では自然なことで、我々のように、死の恐怖で心を病むことはない。母の場合、死を身近に感じると一過性に頭が惚ける。その惚けは生死に関する部分のみで、たとえば、日常生活のことや、週一回の骨粗鬆症予防薬を飲む日など私より確かに記憶している。高齢の老人の多くが身につけているこの惚けのシステムは、修行者が難行苦行で得られる悟りの境地に、いとも簡単に導いてくれるようだ。
今秋の進行は早い。
自然公園は更に秋色が深まった。マユミの実はピンクに色づき、ピラカンサの朱色は鮮やかさを増した。濃い緑の中に溢れる朱色を見るとクリスマスを連想してしまう。
最近、脳梗塞のことをよく耳にする。
夏の始め、父方の70過ぎの姉が発作で倒れた。発作は病院入り口で起こり、処置が迅速だったので軽く済み、目に見える後遺症は殆どない。父は50歳の時に軽い脳梗塞で倒れた。しかし、まったく後遺症を残さず、80歳まで生きて他の病で死んだ。私の体質は母に近く、父と私は食生活も生活態度もまるで違うので、リスクは少ないと思っている。しかし、上の姉は糖尿を持っているので心配だ。
数年前、九州の知人から気になる手紙をもらった。内容はごく普通の近況報告だったが、気になったのは彼の字である。字の横棒が総てノコギリの歯のようにギザギザに震えている。もしかして、脳に小さな梗塞が起こっているのでは、と私は危惧し忠告した。しかし、本人は健康診断をきちんと受けていると言うので、それ以上は黙っていた。しかし、それから直ぐに彼は脳梗塞で倒れ入院し、今も後遺症に苦しんでいる。後になって、もつと厳しく忠告しておけば良かったのでは、と深く後悔した。
間もなく年賀状の季節だ。親しい人から貰った年賀状の書き文字の立横の棒がジグザクだったら、それとなく注意を促したが良いかもしれない。
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