昆布のようなウラボシ科のシダ植物。07年10月20日
19日
初夏の頃、私の住む集合住宅に光ケーブルが入った。それ以来、ひかりoneとNTT東日本の営業攻勢が続く。殊にひかりoneの営業は熱心で、戸別訪問もパンフレット配布もうるさいくらいだ。光通信ではインターネット速度は早くなるし、電話の料金もかなり安くなる。両社とも、機能も料金も殆ど同じで、どちらにするか決めかね両方に問い合わせしてみた。
NTT東日本の担当は控えめな技術系の人で、専門的な質問にも打てば響くように答えてくれる。対してひかりoneのKDDIの担当者は技術的なことにはまるで疎く、話しぶりも軽薄。双方に2,3度ずつ電話をしてみたが、誰が出ても同じ姿勢だった。これからのトラブル対応のことも考え、私はNTT東日本のひかり電話を選んで申し込んだ。月末に工事が終わるので、インターネット動画がサクサク見れそうだ。
20日
昨夜の雨が天然の打ち水になって、湿った散歩道が清々しい。朝の冷え込みで、公園の錦木の紅葉が鮮やかさを増した。今は最高に散歩が心地良い。ようやく常連の年寄りたちにも笑顔が増えた。「夏を乗り越え、秋を迎えられたら1年寿命が延びる。」と、顔馴染みの老人が挨拶の後、母に話していた。確かに、母も風邪さえ引かなければ、何とか来春の花見ができそうだ。
いつも自然公園の入り口で休んでいるクーちゃんと仲良くなった。70歳少し前の大柄な男性が連れて来るダックスフントのミックスで、長い毛がとても可愛い。少し前まで、母の車椅子が怖くて、すぐに飼い主の足の間に逃げ込んでいた。それを引っ張り出して、肩こりのツボを指圧してあげている内に、クーちゃんはお腹も撫でろとゴロリと仰向けになるようになった。今は母の膝に乗っかるくらい親しくしている。
自然公園では、老人が尺八を吹いていた。この音は実に気持ちが落ち着く。日本の大地に生えた竹が奏でる音だから、日本人の感性にピッタリなのかもしれない。
帰りは、生協には寄らず、桐ヶ丘を抜けた。団地外れの見晴らしの良い坂道を、母も私も気に入っている。片側の下に桜並木が見え、その更に上の台地に樹木に囲まれた東京北社会保険病院がある。
以前坂道の石垣には、昆布みたいなウラボシ科のシダが生えていたが、最近抜き取られた。
このシダは郷里では民家の瓦屋根に沢山生えていた。そのまま抜かずに放ってあるところをみると、抜くと屋根が弱くなるからかもしれない。シダではないが、檜枝岐の茅葺き屋根にはヤマユリが生えていた。こちらも、そのまま放ってあるのは同じ理由なのだろう。ヤマユリは風情があるが、昆布みたいなシダは異様に見える。
異様に思ったのには訳がある。
子供の頃読んだ民話に・・・山の中で旅人一行が道に迷った。薄暗くなって困り果てていると、一軒の民家があった。家の主人のおばあさんに一夜の宿を頼むと快く招き入れてくれた。夕餉の時、おばあさんは隣の部屋から不思議な見た事もない野菜を山のように持って来ては、刻んで囲炉裏の大鍋に放り込んだ。すると、大鍋から今まで嗅いだことのない美味しそうな香りがした。旅人達は薦められるまま大鍋の汁を何杯も美味しそうに平らげた。しかし、旅人の一人は不安にかられ、そっと隣の部屋を覗いて見た。部屋にはびっしりと昆布のような異様な植物が生えている。彼は気持ち悪くなって、汁を食べるふりをしながら灰の中にそっと捨てた。そして、空腹を我慢しながら床に就いた。夜明け、眠れないまま薄明かりの中に他の旅人達を見ると、皆は牛や馬に変わっていた。
彼の様子に気づいたおばあさんは山姥に姿を変え、捕まえようとした。彼は一目散に山を駆け下り、ようやくのことで助かった・・・。
子供の私は、その不思議な植物は、絶対に屋根に生えているシダだと思い込んでいた。それから、ウラボシ科のシダを見ると、その民話を思い出し、刻んで大鍋でクツクツ煮込んだらとても美味いだろうと思うようになった。
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