秋日和。07年11月12日
昨夜までの雨は止み、玄関前から真っ白な富士が見えた。母は杖をついて手摺際まで行き、「気持ちが良いね。」と見とれていた。富士の端正な姿は、眺める者に不思議な力を与えてくれるようだ。
散歩道の紅葉は雨に洗われ、濡れた舗道が木漏れ日に光っていた。だが、私も車椅子の母も気分はすぐれない。理由は一匹もペットに会っていないからだ。御諏訪神社上のゴールデンのルイちゃん。緑道公園の陸橋でいつも日向ぼっこしている赤トラ。緑道公園の水飲み場ではおばあさんに連れられたマルチーズ。自然公園入り口のクーちゃん。いつもなら、他にも沢山のネコや犬たちに出会うのに、今日は一匹もいない。意識してペットたちを可愛がっていた訳ではないが、会えないとなると、彼らの存在の大きさに気づかされる。
今日はペットだけでなく、いつも飲んだくれている、ホームレスたちにも会わなかった。好天の下、紅葉を眺めながら飲んだら格別と思うのだが、彼らに雰囲気はどうでも良いのかもしれない。そのホームレス仲間の説教おじさんは、昨日は小雨の緑道公園の舗道に寝転び、気遣う仲間に毒づいていた。彼は最近、酔って倒れることが増えた。あの様子では、相当に体を損なっているのだろう。
しらふの時の説教おじさんは、いつも暗い顔で歩いている。しかし、酒が入ると大声で「こんな生活を続けちゃいかん。」と、ホームレス仲間に説教する。歳は40代半ば、黒のトレンチコートを着ている風体や喋り口から、彼は元サラリーマンだと推測している。それが何故そのような生活に落ちてしまったのか。彼にも楽しい子供時代や未来を夢見た青年時代があつたはずなのに、今は、アルコールに浸っている僅かな時間だけに生きている。今の弱りようを見ると、彼の余命は高齢の母とさして変わらないかもしれない。
散歩帰り、桜広場のベンチに顔見知りのおじいさんが桜の落ち葉を手に腰かけていた。挨拶すると、「綺麗な紅葉だね。」と落ち葉を見せて静かに笑った。彼は夫婦仲も良く、穏やかな老後をおくっている。その人生の最終章は説教おじさんとは余りにも対照的で、まぶしく見えた。
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