20年維持して来たケフィアヨーグルトの種を食べてしまった。07年11月2日
自家製ケフィアヨーグルトを食べるのを長年の習慣にしている。
今のヨーグルトは20年前、カナダ人から貰ったコーカサス原産の種菌を使って維持して来た。製法は、食べ残した150ml程を種菌として牛乳1000mlに加えるだけだ。
今日、その残すべき大切な種をうっかり食べてしまった。
20年間、大切に作り続けたヨーグルトは我が家特有の味に変化し、新しい種菌での再現は難しい。しかも、その予備種菌そのもののストックが無い。新しい種菌を取り寄せるまで市販の不味いプレーンヨーグルトで我慢する他ないかと、落胆しながら冷蔵庫を開けると、母の朝食用に取り分けて置いたケフィアヨーグルトがあった。量は100mlと少ないが十分に発酵できる。習慣で無意識に取り分けておいたのが良かった。
ケフイアヨーグルトは室温20度、24時間で美味しく発酵する。
ケフィア菌は多種の乳酸菌集合体に酵母菌が混じった大変丈夫な菌だ。温度条件によっては酵母菌が乳糖を発酵させて炭酸ガスが発生し、すが空いてシュワーとした不思議な炭酸味になる。
低温タイプなので夏場の温度管理は注意が必要だ。時たま温度が上がり過ぎて発酵が早まり、表面が凸凹に固まって乳精が分離することがある。匂いに悪臭がなく、ヨーグルトの甘い香りがするなら食べても問題はない。トルコ辺りでは、わざと分離するまで発酵させて、チーズ状に分離した固形分を食べている。その味は濃厚で私は大好きだ。乳清にも有用な栄養分が多く含まれているので、無駄なく飲んでいる。
発酵し過ぎの時は乳精表面の皮膜だけを薄くすくって捨てる。皮膜には雑菌が繁殖していることがあるからだ。その下の中心部は元気に発酵しているので種菌として使い回す。
時には元気な新しい種菌を加えることもあるが、そうしなくても問題なく発酵する。
専門家によると乳酸菌と腐敗菌は同じ仲間だ。その仲間の中で食物を美味しく変えるものを、乳酸菌・酵母菌・納豆菌などと呼び、不味く変えるものを腐敗菌と呼んでいる。
腐敗菌と食中毒菌はまったく違う。
食中毒菌が増えても見かけは腐敗しているように見えない。食中毒菌は死に至らせるような強力な毒素を出して食中毒を起こすが、腐敗菌はそのような毒素は作らない。例えば、食中毒菌ボツリヌス菌のボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)は0.5kgで世界人口を死に至らせるほどに強力だ。
腐敗菌はとても強い菌で、食中毒菌の繁殖を抑える働きがある。
だから、悪臭はなって、見るからに腐っていても食中毒菌は含まれていない。
世間には腐ったものを食べても平気だと豪語する者がいるが、それは毒素が含まれていないから当然のことだ。ただし、腐っていたら口が曲がる程に不味く、とても試す気にはなれない。
種菌は、以前は赤羽や池袋のチーズコーナーで簡単に手に入ったが、最近は売っていないことが多い。それで一度だけ、インターネットで取り寄せた。しかし、1回分300円と高く、それっきり止めた。種菌は常温保管では弱るので、冷蔵庫に入れて置いたが良い。
夏場に、時折追加する種菌はケフィア生菌サプリメントのカプセル中身を代用することがある。これは6カプセルほどで十分で、費用は60円と格安。
生きたケフィアと酵母菌が交ざっていて、ヨーグルト用種菌と同様に美味く仕上がる。ただし、常温保管しておいたカプセルは増殖力が弱っているので、冷蔵保管してある新鮮なカプセルを使う。私の経験では、1年近く常温保管したカプセルの種菌では発酵しなかった。
正式なヨーグルト用のケフィアの種菌の場合は、説明書に1スティックを1回毎に使用とある。しかし、温度管理をきちんとすれば使い回しても劣化することはない。我が家のヨーグルトは20年間、食べ残した150mlを種菌に使い回している。それでも、とても美味く仕上がる。
しかし、市販のヨーグルトを種菌として使い回すのは難しい。なぜなら品質管理のため、一種類の乳酸菌を選んで増殖させたものだからだ。血族結婚と同じで、一種だと次第に繁殖力は弱まる。
対してケフィアは雑多な種類の乳酸菌と酵母菌の集合体なので、使い回してもいつまでも元気だ。
ヨーグルトはぬかみそと同じで、長く使い続けると周りの環境の乳酸菌が加わって、その家特有の味に変化する。ちなみにコーカサスなどの本場には、自然の木の枝で牛乳をかき混ぜ、自然の乳酸菌を利用してヨーグルトを作る方法がある。
その仕組みは、地中に普通にいる乳酸菌を蟻が体につけてその木の枝へ運び、その菌を人が利用するのである。同様に、日本の地中にも特有の乳酸菌が無数にいて、それが我が家のヨーグルトに加わって特有の味になった。
先にも書いたが、難しいのは夏の温度管理だ。
気温が高いと発酵が進み過ぎ、表面の皮膜に雑菌が繁殖することがある。私は夏場は、魔法鍋に保冷剤と一緒に仕込み、適温の20度辺りを保つ。もう一つの方法は、12時間ほどで十分に発酵するので、そこで冷蔵庫へ入れて発酵を止める。
先述したが、発酵が進むと表面が凸凹に固まり、透明な乳精が分離する。その場合、表面の皮膜に雑菌が繁殖して味が悪くなっていることがあるので、皮膜だけ薄くすくって捨てる。
温度管理が正しいと、絹ごし豆腐みたいに滑らかな表面のヨーグルトが出来る。その形状のヨーグルトは甘い香りがして実に美味い。稀には酵母菌が繁殖してシュワーと炭酸味になることがある。これは特有の甘い香りがして実に美味い。
写真は美味くできたヨーグルト。スプーンのすくった跡が崩れていない。
ヨーグルトが発酵する間は、絶対にかき混ぜたり揺らしてはならない。かき混ぜると固まらなくなる。それを守っても固まらない時は牛乳の質に問題がある。
私の経験では、大手乳業メーカーの牛乳にそのようなものが多い。もしかすると、原料を何かで水増し加工しているのかもしれない。むしろ、安い中小メーカーの牛乳の方が美味しいヨーグルトができる。どのメーカーでも、成分無調整の表示があったら問題なく固まる。種ヨーグルトの量が多すぎても固まらないので、種ヨーグルトの量は牛乳の2割以下にとどめる。
ヨーグルト用のケフィア種菌説明書には、牛乳は加熱し冷まして使えとある。しかし、TV番組でブルガリア人がパック牛乳をそのまま使っているのを見てから、私も過熱せずにそのまま使うようになった。結果は、加熱して冷ました牛乳より、パック牛乳そのままの方が断然美味しくできた。日本のパック牛乳の殺菌基準は厳しく、加熱する必要はなかった。乳酸菌はとても強い菌で、他の雑菌の繁殖を抑える。
ちなみに、フランスのナチュラルチーズは生乳を使う。以前、フランスで食中毒事件があり、過熱して使う製法へ変えるように食品衛生法が変えられた。しかし、生乳に微量に含まれている様々な菌が死滅して、伝統的な味が失われた。その後、製造業者の猛抗議を受け、厳重な品質管理のもとに生乳の使用が認められた。さすがに食の国である。市販品のパック牛乳を過熱せずに醗酵させたヨーグルが美味しいのも同じような理由があるのかもしれない。
使用する容器は乾燥させて使う。もし濡れていたら、必ず乾いたキッチンタオルなどで拭いて乾燥させる。それで雑菌の混入を防ぎ上手く発酵する。しかし、手術道具を滅菌するような厳重な措置は必要ない。乳酸菌は条件が揃えば頑強な菌で、僅かな雑菌などは簡単に駆逐してしまう。
手作りにこだわるのは安いだけでなく、抜群に美味しいからだ。時たま、評判の市販高級品を食べてみるが、どれもがっかりするくらい不味い。
以前、知人が長野の料理研究家が作った評判のケフィアヨーグルトを土産にくれたことがある。早速、食べてみると、赤ちゃんのヘドみたいにドロリとして糸を引き、すえた悪臭があって不味かった。
「帰りの電車で、温度を上げ過ぎたのだろう」
知人に言うと、向こうで食べたのもその味で、念のため保冷パックに入れて来たと言う。知人は有名料理研究家の名に幻惑されたようだ。
手作りケフィアヨーグルトに技術は不要だ。温度管理と清潔さを守れば、誰でも簡単に美味くできる。参考に・・・ヨーグルトを紙ナフキンで包んで液体の乳清を自然に滴らせて落として、固形分だけにしたものは大変美味しい。乳清はホエーとも呼ばれ、良質のタンパク質を含んでいるので飲用にしている。
夏場、魔法鍋にセットしたところ。鍋との間に保冷剤を適量入れる。
中の焼けこげがある蓋付きステンレス容器にケフィアヨーグルトは仕込んである。焼けこげは毎回、ガス火で軽く加熱乾燥させているいるので、長年のうちに付いた。魔法鍋、ステンレス容器共に25年前から使っているが、どこも痛んでいない。床においた内蓋上の小さなものは温度計。
室温12度の低温でも大変美味しく醗酵する。低温熟成の酒があるがそれと同じかもしれない。ただし、24時間では不十分で、35時間くらい必要だ。早く醗酵させたい時は種菌を多めの2割を限度に増やすと良い。私は冬場は、牛乳をぬるく温め、ヨーグルト容器の回りに30度程のぬるま湯を入れて発酵させている。
反対に暑い夏場は早く醗酵するので、12時間程で冷蔵庫に入れ醗酵を抑える。目安は絹ごし豆腐のような滑らかさだ。
--魔法鍋とは、
寸胴のオールステンレス製の魔法瓶構造の保温調理鍋のことだ。使い方は、内鍋に具材と出汁を入れて加熱し、それを保温容器へ戻して放置すると煮上がる。これは、長時間弱火で煮るシチューなどに向いている。火を使うのは過熱時だけで、仕込んだまま寝れば朝には完成している。これは一人暮らしには、とても安全で省エネの優れた鍋だ。私の鍋は発売と同時に買ったが、今も問題なく使える。
両親の出身、北九州の正月料理にガメ煮がある。これは里芋等が煮崩れするので、火の加減が面倒だ。しかし、この鍋を使うと、まつたく素材を煮崩さずに柔らかく煮上げることができる。
「おじいちゃんのバス停」3番目シーン。
おじいちゃんが昔住んでいたドングリ山の思い出。
近況・・・絵本「おじいちゃんのバス停」を完成させて、Amazon Kindleの電子図書 にてアップした。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B79LKXVF
Kindle Unlimited 会員は0円で購読できる。
上記ページへのリンクは常時左サイドに表示。画像をクリックすればKindleへ飛ぶ。
絵本の内容・・おじいちゃんのバス停・篠崎正喜・絵と文。老人と孫のファンタジックな交流を描いた絵本。
おじいちゃんは死別した妻と暮らした家に帰ろうとバス停へ出かけた。しかし、家は取り壊され、バス路線も廃止されていた。この物語は、20年前に聞いた知人の父親の実話を基にしている。対象は全年代、子供から老人まで特定しない。物語を発想した時、50代の私には77歳の父親の心情を描けなかった。今、彼と同じ77歳。ようやく老いを描写できるようになった。
概要・・初めての夏休みを迎えた小学一年生と、軽度の認知症が始まったおじいちゃんとの間に起きた不思議な出来事。どんなに大切なものでも、いつかは終りをむかえる。終わりは新たな始まりでもある。おじいちゃんと山の動物たちとの、ほのぼのとした交流によって「終わること」「死ぬこと」の意味を少年は学んだ。
描き始めた20年前に母の介護を始めた・・このブログを書く8年前だ。
絵は彩色していたが、介護の合間に描くには画材の支度と後片付けに時間を取られた。それで途中から、鉛筆画に変えた。鉛筆画なら、介護の合間に気楽に描けた。さらに、水墨画に通じる味わいもあり、意外にもカラーページより読者に評価されている。それはモノクローム表示端末で正確に表現される利点がある。
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