一夜でクリスマス飾りは松飾りに変わる。07年12月25日
散歩帰りに駅前へ買い物に出たが、大混雑で母の車椅子を押すのが大変だった。どの食品店にもローストチキンとワインが並んでいる。いつの間にか、それらはクリスマス定番になってしまったようだ。50数年前、住んでいた漁師町の大堂津では、クリスマスに特別な事は何もなかった。ただ我が家では、いつも母がビーフシチューを作ってくれた。だから今でも、ジングルベルを聴くとシチューの香りを思い出す。他に安物の玩具を貰った記憶があるが、当時の子供達はクリスマスより、お年玉が貰えるお正月の方が断然に待ち遠しかった。
帰り道の赤羽駅高架下ビバガートで、母に言われてサンタ人形のボタンを押した。母はサンタが踊りながら歌うクリスマスソングを楽しそうに聴き入っていた。しかし、今日のサンタは踊り疲れているように見える。通行人も、またか、と言った顔で立ち止まる者はいなかった。明日になれば、クリスマス飾りは跡形なく消え、正月飾りに代わる。2007年は、私には辛い事が多かったが、母には穏やかな年であった。来年、サンタ人形に再会出来るだろうか、ジングルベルに聴き入っている母の後ろ姿を見ながら、ふと思った。
本の締め切りが2月末に決まった。正月なしで準備に入り、無我夢中で原稿を書き上げた頃は春になっている。本業の絵と本の仕事の違いは、自分がそこに有るか無いかだ。絵はどんなに自分の時間を費やしても空虚さは感じない。しかし、今回はやり遂げても何も残らない気がする。それでも猛然と走り出してしまうのは、ハングリー世代の性癖かもしれない。
クリスマス番組は騒がしいだけなのでテレビは止めた。母の部屋からは点けたままのテレビの音が聞こえる。すでに母は催眠剤を飲み寝入っているが、テレビを止めると目覚めてしまう。にぎやかな音に安らぐ気持ちは理解出来る。私も静か過ぎると却って寂しさが募る。
知人の尽力で次々と絵が売れ、久しぶりに心穏やかに正月を迎えられる。そのことを母に話すと、嬉しそうに買って欲しいもののリストを並べた。しかし、何でも買えるほどのゆとりはない。気を緩めれば、たちまち校了までの生活費が危うくなってしまう。
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