鬱気味の母は自然公園に行くと明るさを取り戻す。08年1月27日
早朝5時、母の激しい咳き込みで目覚めた。咳は母の寝室へ駆けつける前に収まった。
「大丈夫なの。」声をかけると、母は目を閉じたまま小さく頷いた。
それから二度寝して6時に目覚めた。いつもは母も目覚める時間だが、寝室の灯りは消えたままだ。15分程、布団の中で母が起きる気配を待ったが物音はない。再度、様子を見に行くと死んだように眠っている。高齢なので呼吸は浅く、本当に死んでいるように見える。4,5分、傍らで様子を見ていたがピクリとも動かないので、心配になり、2,3度声をかけると目覚めた。
「一晩中、変な夢ばかり見ていて、良く眠れなかった。」
母はソロソロと起き上がりながら、小声でつぶやいた。本来、母は声が大きく、殊に朝は元気が良いのだが、このところ、気弱に小声で話すようになった。
母は、金曜日の内科診察の時、「私が危なくなったら、看取ってくれますね。」と医師に念を押していた。内心、もう長くは生きられないと覚悟しているようだ。母にとって、死は年々身近になって行く。去年年末には母より一つ上の知人が亡くなった。次は自分との思いが強いのだろう。
気弱になった大きなきっかけは、先週、一睡もできなくて、ふらついて歩けなくなったことだ。翌日から睡眠導入剤レンドルミン服用方法を変えて眠れるようになり、ふらつきは消えたが、以来、ふさぎ込むことが増えた。同時に、食欲不振、吐き気、居眠りも増えた。吐き気は即効性のあるナウゼリンで対処できる。しかし、居眠りと食欲不振は高齢期特有の症状で、治すのは難しい。母との生活は、廃車寸前の車を騙し騙し走らせている気分である。
午後4時、居眠りから目覚めた母が、ビデオを見せてくれ、と私を呼んだ。以前は自分で操作出来たが、今は間違えるようになった。昨夜録画した「ER緊急救急室」を再生すると、母は見入っていた。好きなドラマへの好奇心はまだ旺盛である。その惚けていない頭がかえって、死への不安を増幅させ、鬱を引き起こしているのだろう。
それでも、自然公園へ行くと明るさを取り戻す。好天の今日は、静かな日溜まりで休み、枯れ草や木々を揺らす風の音に聴き入っていた。クヌギは新芽が大きくなるまで、枯れ葉を身にまとっている。母はクヌギの枯れ葉がサラサラと揺れる音が好きだ。自然の草木を吹き渡る風は、永遠の命を紡ぎ続けているようで疲れが和む。
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