救急車で彷徨う高齢者患者。08年4月22日
21日
自然公園は昨日の賑わいが嘘のように静かだった。曇り空から時折薄日がさす。石垣でのんびり日なたぼっこをしている青トカゲたちは、手を近づけても気がつかない。これでは、鳥や子供たちにすぐに捕まってしまう。ウトウトしているトカゲたちの頭を指先で触れ、目を覚まさせながら、車椅子を押した。
最近疲労気味で、古民家の座敷で少し寝た。母と係の人が土間で雑談をしているのを聞きながら5分ほど眠った。いつもながら古民家の座敷は心地良く、僅かな眠りで疲れが取れた。
帰りは赤羽台団地の八重桜を眺めながら赤羽駅へ出た。珍しい緑色の鬱金桜は少しピンクをおびて終わりは近い。駅高架下のアルガードでボタン海老と鯖を買った。野菜も予定していたが端境期で良い品がなく買うのはやめた。
帰宅すると先日データを送ったTシャツ展覧会の主催者からパンフレットが届いていた。一般公募のウエブ上展覧会だが、私は招待作家なので審査はない。受賞者はウエブを見た一般からの投票で決まる。更に業者に採用されれば売り上げの3%が入る。
この手の応募は始めてで作品選定に困った。芸術性を重視すれば玄人受けするが、一般には人気がない。悩んだ末、売れることを優先して、一般向け図柄を考えた。現実は厳しいが、売れると期待して結果を待つことにする。
22日
日射しが戻り暖かく、自然公園は保育園児や老人たちで賑わっていた。帰りは今日も駅前へ出た。駅前は昨日より人出が多い。お昼前の時間帯の所為か、人出の殆どは老人たちだ。老人たちの多くは杖をつき足元がおぼつかない。私が70歳を過ぎる頃は、更に高齢化した風景に変わっているのだろう。想像すると慄然とする。
帰宅して自室で一休みしていると、ベットの母が粗相をした。母の身体と回りを清浄し、寝間着や毛布等の汚れ物はバケツや浴槽の石鹸水に放り込んだ。
幸いにも洗濯向きの好天だ。急いで昼食を済ませ、石鹸水でざっと洗った汚れ物を熱水シャワーですすぎ、洗濯機で洗い直した。と言葉にすれば簡単だが、終わったのは午後7時。早朝から休みなく14時間働いたことになる。夕暮れ、最初に干した洗濯物は殆ど乾いたので、残りは夜干しした。
介護で大変なのは下の世話だ。母には認知症がないので楽だが、認知症の老人を抱えた家庭では凄まじいことになる。昔、母が老人センターに入院していた時、同室に認知症の老人が救急で運ばれて来た。廊下から聞こえた家族と婦長の会話では、疲れ果てた家族が緊急避難的に救急車を呼んだようだ。当時は介護保険はなく、その老人は2,3日後、自宅へ戻された。
その後、老人は認知症専門の病院へ再入院させられたかもしれない。当時の安い認知症療養病棟の多くは、老人はオムツを付けさせられて強い安定剤を打たれベットに拘束されていた。その悲惨な状況を知りながら老親を入院させる家族は、本当に疲れ果てていたのだろう。
洗濯が終わり休息していると、NHKのクローズアップ現代で救急で運ばれる高齢者患者を取り上げていた。番組によると、本当に急を要する高齢者は少なく、簡単な助言だけで落ち着く患者は多い。しかし、急を要する老人でも入院できる患者は少なく、深夜の街を救急車は彷徨うことになる。
政府の方針は高齢者病床を更に6割へ減らす方針だ。私はそれを予測して、母は在宅介護に決めた。在宅は大変だが、転院を繰り返す家族よりストレスは小さい。在宅でも家庭医と協力すれば急な病変にも対応出来る。但し、認知症がないことが前提である。
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