抗欝剤スルピリドで、母はドラッグハイになった。08年4月27日
母に新しく処方された抗欝剤スルピリドは胃粘膜の血流をよくし、吐き気もたれを緩和する。抗欝作用は気持ちを前向きにし、心を安定させるので不眠にも効果がある。金曜から飲ませ始めたが、すぐに胃腸症状と不眠に効果があった。
しかし今朝、「吐き気は取れたけど、疲れは取れないね。」と母は訴えた。
「疲労は老いの症状として受け入れないと、どうしようもないよ。」と言うと、「ただ言ってみただけ。」と母は黙った。母にはできるかぎりのことをして上げようと思っているが、限界はある。母の疲労感は、たとえ名医でも治せない分野だ。
散歩は早めに出た。新緑を見ると厭なことは総て忘れてしまう。途中、東京北社会保険病院下の公園でお茶を飲んだ。公園の斜面から下りて来る冷たい爽やかな空気を、母は心地良さそうに何度も深呼吸していた。
少し離れたベンチでは、缶ちゅうハイ片手の説教おじさんが連れに説教していた。
「そんなことをしていて、どうするんだ。反省して先の事を考えろ。」
説教されている傍らの気が弱そうなおじさんは、小さくなって頷いていた。
「以前より元気がないね。」
説教おじさんの声が小さくなったと母が言った。確かに、蚊が泣くような声で、以前の勢いはない。加えて最近は、飲むと足がもつれすぐに転ぶ。それでも、飲み続けているところを見ると、よほど頑健な身体なのだろう。
緑道公園で顔馴染みの老人たちに会った。母は新しくした車椅子が乗り心地よいと自慢した。1年2ヶ月使い込んだ車椅子はタイヤが擦り減ったので、昨日、新しい車と取り替えた。金属部分は緑色メッキで、車椅子全体がグリーンの不思議な色合いをしている。
「ほほう、燃費が良さそうだ。」
老人達は車椅子をとりかこんで褒めた。新しい車は押すのが軽く、私の燃費は良い。
自然公園に着く頃、薄日が差して暖かくなった。
今日は公園ボランティア主催の野草試食会で、30人程の熟年達が集まっていた。今はノビル、ヒメジョオン、カキドオシ、タンポポ、カラスノエンドウ、シロツメクサと野草は豊富だ。都内でこのような催しに参加出来る北区住民は恵まれている。
仕事があるので早めに帰宅した。今、40号の絵を描いているが、もう一つの仕事の本の編集方針が乱れていて気になり、集中出来ず困っている。
昼食後、母に背中が痒いから痒み止めを塗ってくれと頼まれた。見た目は何もないが、歳を取ると痒みが出ることが多い。
「いいね。痒いと言えば塗ってくれる者がいて。一人暮らしの老人ではそうはいかないよ。」
と自分の老い先を言うと、「わたしが化けて出て、塗ってやるよ。」と母は明るく言った。抗欝剤スルピリドの効き目で、昨日から母はややドラッグハイになっている。疲れは相変わらずだが、気分が明るくなってくれたのは嬉しい。
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