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2008年5月11日 (日)

昔の大家族には生と死のダイナミズムがあった。08年5月11日

今朝も母は疲労を訴え暗い顔をしていたが、ようやく、私はそんな母に慣れてしまった。励ましながら椅子に座らせ、「これは気分の落ち込みを治す特効薬だから、すぐに元気になるよ。」と抗欝剤スルピリドを飲ませた。始め顔をゆがめ憂鬱に腰かけていた母は、やがて居眠りを始めた。20分程して行くと母はお化粧を始めていた。どうやら抗欝剤と私の言葉が効いたようだ。
母の体調が落ちているのは間違いないが、実態以上に重い症状を示している。元気だった老人がさほど悪いところはないのに急速に体力が落ちる場合は老人性欝が考えられる。これは老人に大変多い症状で、もし心当たりがある方は医師と相談してみると良い。

3月と比べると母の世話の負担は二倍になった。しかし、それで落ち着いてくれるなら、さして苦にならない。困るのは急速に悪化して、24時間介護が必要になることだ。できることなら、その期間は短く終わって欲しい。

雨の中、自然公園へ出かけた。途中、雑種のワンコが母の車椅子に近づいて前足をかけた。母は頭を撫でながら笑顔になった。茶色い日本犬の体型で長毛種がミックスしている。とても可愛い女の子で、名はチェーリーと飼い主が教えてくれた。通り道のゴールデンのルイちゃんとは仲が悪いと飼い主は話した。彼女はルイちゃんの匂いの着いた私の袖口を興味深く嗅いでいた。もしかすると、若いルイちゃんに本当は興味があるのかもしれない。

自然公園に着くと一瞬だけ雨が止んだので母を歩かせてみた。10メートルほど歩いて止めたが、それでも嬉しい。「明日になれば、あと1メートルは余計に歩けるよ。」と母に言うと、笑顔になった。
車椅子に乗せると同時に再び降り始めたので雨具を被せた。公園の雨に洗われた新緑が美しい。雨音を聞いていると戦後間もない子供の頃を思い出した。
「雨が降ると、雨漏りの音が賑やかだったね。」と母に言うと、「子供たちは大騒ぎで家中の洗面器やバケツや鍋まで集めて、雨漏りを探しては敷いていた。」と懐かしそうに話した。日本は貧しかったが、子供たちは元気で明るく貧乏を苦にしなかった。それは今の東南アジアあたりの貧しい下町の雰囲気に似ている。当時は三世代同居の大家族が多く、同じ家で年寄りが死んで行く一方、新しい命が生まれていた。その生と死のダイナミズムは、当時の人間を逞しくさせていたようだ。

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