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2008年6月15日 (日)

昼顔が楚々と見送る鈴の音 08年6月15日

昨夜、古い友達のT君から、会費を負担するから、月末の同窓会に自分の代わりに出席してくれないか、と頼まれた。事情を聞くと、九州の母親が末期の胃ガンで、その日は見舞いに帰ると言う。大正元年生まれの大変元気な方で、百歳まで長生きしそうだ、と聞いていたので驚いた。
私の母も芳しくなく、今は落ち着いているが、突然悪化することがある、と事情を話して同窓会は遠慮した。

元気な人が突然亡くなったり、今にも死にそうなのに長生きしたり、と人の寿命は誰にも分からない。私の母も、何度も死にかけながら、細々と命を保っている。そんな母についてT君は、病院に入れなかったから長生きしているのでは、と話した。
病院に入れれば、教科書通りの治療はするが、個々への細やかな配慮はない。たとえば、患者の食欲が落ちても、本人のし好に合わせて特別食を用意したりはしない。もし、とことん栄養が不足したら、栄養剤をチューブで胃腸へ送り込めば良い、と病院は考える。しかし、老人は、それで一気に寝たっきりへ進行してしまう。
T君の家は古くから御所の御典医をしていた家系で、一族も兄弟も医師をしている。その見識で母親は最高の施設に任せたが、それでも至らない所が多かった、とT君は話していた。

今日も爽やかに晴れた。
日射しは強いが、木陰に入ると涼しい心地良い散歩だった。自然公園で母は少しだけ歩いた。歩く距離が半減した時は母も私も気落ちしたが、いつの間にか現実を受け入れ、それを当たり前に思うようになった。むしろ今は、散歩に連れ出せることを感謝している。母の場合、どのような高価な薬や治療よりも、自然に触れる方が効果がある。今日は自然公園の茂みに薄桃色の昼顔を見つけて、母は喜んでいた。夏日射しに楚々と咲くこの花は心を打つ。

帰り、駅前の商店街で赤ワインを買った。安売り日で1.8リットルパック2本で1300円とちょっと。プルーンのワイン漬けに使うが、この量を1ヶ月で使い切る。
途中、ウナギの"まるます家"は午前中から客で一杯だった。この店は、私が知っているこの35年間、殆ど変わらず安い。繁盛すると改装して内容を変える店が多いが、昔のまま昭和30年代の雰囲気を保っているのがとても良い。母の介護が始まってからご無沙汰だが、以前は客が来るとこの店へ案内していた。

帰りの緑道公園で休憩した。商店街の雑踏の後なので、静寂が心地良い。
休んでいる目の前を子犬を連れたおじいさんがご詠歌を唄いながら過ぎた。白昼の歩道をゆっくり過ぎてく唄声は懐かしい。子供の頃、漁師町の誰もいない眩しい道を、巡礼が鈴の音を響かせて過ぎて行くのをよく眺めた。今思うと、巡礼は30代の年増が多く、子供心にとても色っぽく感じていた。

昼顔が楚々と見送る鈴の音

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