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2008年6月20日 (金)

高齢化社会を思うと、自分の身体は自分で守る他ない。08年6月20日

今日は母の病院のハシゴをした。早朝1番の予約で赤羽北整形外科でのペインクリニック。治療室に母を預け、私は一旦帰宅して1時間後に迎えに行った。

母の腰痛の原因の腰椎圧迫骨折は、医療用セメントを骨折箇所に注入して、一発で治す治療法がある。それは劇的な効き目で、先日のテレビ番組では、激痛で寝返りも打てなかったおばあさんが、30分程の注入治療後、施術医師に笑顔で挨拶して歩いて帰って行った。
問題は、人によっては起こるセメントの副作用と、保険がきかず30万程かかることだ。もし、母が腰痛を発症した6年前に、この治療方法を知っていたら、考慮したかもしれない。しかし、今となっては経済的なゆとりがあっても躊躇する。危うくて脆い母の体に試すには、冒険が過ぎる。
老人達で満席の待合室で母を待つ間、次々と患者がやって来た。この光景を見ていると、これからの高齢化社会を思い憂鬱になる。

母を連れて、次の生協浮間診療所に内科の診察へ向かった。昔、浮間は低湿地の田園地帯だったが、戦後工場が進出し、更に工場はマンションに建て変わった。だだっ広く殺風景な浮間の街を、左手に都営団地を見ながら真っすぐ150メートル程歩くと角に布団屋がある。ひっそりとした布団屋の手が届きそうな軒下には、毎年ツバメが巣をかける。今日も、可愛いヒナたちが私たちを珍しそうに見ていた。以前、布団屋は裏の工場で布団ワタの打ち直しをしていたが廃業した。しかし、老主人は資産家で、夫婦養子に店を任せて悠々自適の生活をしている。

のんびり歩いたが診療所にはすぐに着いて、予約時間まで30分程、待合室で待った。こちらの待合室も老人ばかりだ。となりのおじいさんはのど飴をクチャクチャ食べ続けている。その向こうのおじいさんは歯が悪いらしく、絶え間なくシーハー音をたてている。母の向こうでは、おばあさんが息子自慢を延々と喋り続けている。老人特有の雑音が溢れるこの空間は、慣れない人には苦痛だろう。老人は善良で礼儀正しい人が多いが、老いはどうしようもない側面を持っている。

予約時間通りに母は診察室に呼ばれた。
「千代野さんは、暑いのはお好きでしたね。」
藤沼医師が笑顔で話しかけたのに、「ええ、8月生まれですので、夏は平気です。」と、母は自慢げに答えていた。そのようなやり取りが続くうちに診察は終わった。老いが原因の病状に治療法はない。むしろ母には、医師との明るいやり取りに治療効果がある。診察後に採血して、10時半に診療所を出た。予定していたレントゲン撮りがなかったのは、聴診器での診察で、胸水が減っているのが分かったからだ。不要な検査をしないのも好感が持てる。

帰り、浮間橋を渡り、御諏訪神社への坂道にさしかかると緑陰に包まれ、今までの喧噪が嘘のように消えた。桜並木の薬局で大量の処方薬を受け取った。今日の診察治療費は整形と内科合わせて2730円。薬代2200円と合わせると4930円。もし、私が母と同じ治療を受けたとすると、3倍の約15000円を支払う事になる。これでは絶対に病気になれない。これから老いを迎える我々は、自分の身体は自分で守る他ないようだ。

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