危うい東京北社会保険病院とアオノリュウゼツランの花。08年6月25日
朝、東京北社会保険病院眼科へ母の定期検診へ連れた行った。
先月と、病院の雰囲気が何となく違う。患者も少なく、職員の対応もガサガサしている。受付向こうの病院食堂は「本日は終了しました。」の立て札があり、食品見本の陳列ケースは撤去されている。もし、改装中なのなら、その旨表示があるはずだが、それもない。中のテーブルや箸立て等の備品はそのままで、まるで経営者が夜逃げしたように見える。
眼科も空いていて、母は待ち時間なしですぐに診察を受けられた。いつもは母と優しく言葉を交わしてくれる担当医が、今日は何となくよそよそしい。先月、診察を受けるようになってから初めて、彼は代診をたてて休んだ。それは勤務姿勢の変化と関係があるかもしれない。
会計を待つ間、母もいつもと違う雰囲気を感じたようで、「何か、今日は変ね。」とつぶやいていた。
東京北社会保険病院は今年9月に、社会保険庁から民間に払い下げられる。手放すのは、赤字だからではなく、地元の協力で去年辺りから黒字経営になったのを見計らっての決定である。払い下げではなく廃院との噂もあり、北区の基幹病院として現状維持を求める住民運動が起きている。
9月まで2ヶ月、職員や医師達は将来への不透明感から、仕事に身が入らないのかもしれない。我が家は眼科だけで影響は小さいが、この病院の特色の産科や小児科を頼っている人は不安が募るだろう。元はと言えばこの問題は、社会保険庁の壮大な無駄遣いに端を発する。失策のつけを、地域医療の犠牲で繕うとは勝手過ぎる。
外に出ると、病院庭の広い豊かな自然に包まれ、厭な気分は消し飛んだ。
芝生中央のヤマモモが豊かに実っていた。数個を摘んで食べると甘酸っぱく美味い。東京のヤマモモは酸っぱいだけだが、ここのヤマモモは郷里日南のと似ていた。
病院庭から下って桜並木へ出た。
先日書いたアオノリュウゼツランの回りを、初老の持ち主が手入れをしていた。
「咲くのが楽しみですね」と声をかけると、笑顔で色々話してくれた。その株は彼の父親が終戦直後に植えたもので、以前、一度枯れかけ、撤去を考えたが、そのままにしていたら持ち直したと言う。
近くに住む大型犬小次郎ちゃんのお母さんの話しでは、その枯れかけた時に花が咲いたらしい。そう言われると、花が咲いていた記憶がある。もしかする、株は一つではなく二つが合体したものだったかもしれない。そう考えると、その一つが花を咲かせて、先に枯れたと解釈できる。
持ち主はそこから離れた駅近くに住んでいる。傍らの説明文は町会長が、控えめな持ち主に代わって書いて立てたものだ。町内の住人も、私も母も、花が咲くのを心待ちにしている。予定では来月始めに咲き始め、夏の終わりに咲き終えて枯れる。生命の終わりを、これ程にドラマチックに迎える植物は珍しい。激動の戦後を、よくぞ生き抜けてくれたと、心から賛辞を贈りたい。
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