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2008年7月14日 (月)

母は行きつ戻りつ老いて行く。08年7月14日

昨日は盆提灯を下げて墓参りに向かう家族に出会った。水色の涼しげな色合いに静かな安らぎを感じる。帰ってから我が家も盆提灯を飾った。

早朝、母が呼ぶブザーで目覚めた。飛び起きて、慌てて母の部屋へ行くと、疲れて起き上がれないと言う。急いで眠い頭を目覚めさせ対策を考えた。思い返すと、昨夜、救心を飲ませるのを忘れている。昨夜の蒸し暑さに加え、弱った心臓が影響しているのかもしれない。上体を支えて、人参末の水溶きで救心を飲ませた。母は飲み終えると、すぐにベットに横になった。

30分ほどして様子を見に行くと、死んだように寝ている。冷たいタオルを頭に乗せても全く反応しない。浅い息づかいで、このまま死んでしまうのでは、と思ったほどだ。無理に起こし、吐き気止めのナウゼリンを飲ませた。食前に飲ませておくと胃腸の働きを高め食欲が増す。

朝食は吐くこともなく無事に食べ終えた。食後、母は少し元気になったが、散歩へは行きたくないと言う。様子から、疲労だけでなく欝の傾向もある。「歩かなくて良いから、外の空気を吸いに行こう。」と誘うと渋々、散歩に応じた。

母は外へ出ると少し気分が和んだ。蒸し暑いので、母に霧吹きの水をたっぷりかけた。本屋さんの前を通ると、スコテッシュホールドの銀ちゃんが、冷房の入った家から外を見ていた。元々タヌキ似のネコだが、最近、太って増々タヌキになって来た。銀ちゃんに会って母に笑顔が戻った。更に、自然公園入り口でダックスとテリアのミックスのクーちゃんに会って母は元気になった。散歩の効能はこのようにペットたちと会えることにもある。

度々かける霧吹きのおかげで、母は自然公園内で少しだけ歩いてくれた。朝、死んだように横になっていた姿がウソのようだ。

午後、彫金時代の仕事仲間のYさんが中元を持って訪ねる予定だ。40年以上の付き合いで母とも親しい。母は会うのが楽しみで、ベットに横にならず来訪を待っていた。

Yさんが来ると、母は一層元気になった。3人で話していると、一瞬、昔に戻ったような懐かしい気分になった。
Yさんの住まいは池袋にある。昭和40年代、池袋東口の都電通りにあった人生座で「人間の条件」6部を通して9時間かけて見たことがある。そのことをYさんに話すと、自分も見たと言う。多分、どちらかが先に見て、良かったと聞いて見に行ったようだ。Yさんも私も若く、徹夜で見ても、まったく疲れなかった。

「人間の条件」は1959年作で、封切りからバラバラに見ていたが、通しで見ると迫力があり、映画の世界が自分の過去の一部になったほどだ。Yさんと話していて、満州での重苦しい戦争ドラマと、トイレ臭い昔の映画館の記憶が突然に蘇った。

玄関前の通路でYさんを見送った。
「池袋へ来たら、是非、家に寄ってね。」とYさんは帰り際に言った。このやり取りも、毎年、変わらない。多分、訪ねるのは、どちらかの弔事の時だろう。

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