楽しい子供時代の記憶は一生を豊かにする。08年7月28日
暑くなってからは玄関が開け放ってあるので、いつも地上風景が見える。
日が傾いてから、部屋の明かりを消して玄関に佇むことがある。そうすると、何故か自分の心がはっきりと見えてくる。気持ちが充実している時は、風景は心地良く見え、そうでない時は寂しさを覚える。
新聞で老人の自殺率が増えたと報じていた。原因は貧困と孤独。孤独の要因は複雑で解決し難く、貧困は更に厳しい。
私自身、上記の二つの問題は身につまされる。20数年前のバブル真っ盛りの頃、将来、貧困が社会問題になるとは夢にも思っていなかった。その頃、私は腕の良い彫金職人で一生食いっぱぐれはないと思っていた。しかし、バブル崩壊と共に、昔の同業者たちは安い海外製品に押されて次々と廃業した。私はその少し前、まだ余裕がある頃に絵に転向したが、そちらもとても厳しい。
現実が厳しいせいか、楽しかった日南市大堂津での子供時代をよく想い出す。
夏休みの今頃は、朝5時に起床して朝食を摂り、近所の秋葉神社へ掃除とラジオ体操へ行った。掃除と言ってもゴミはなく、地面に箒目をつけるだけで、後は6時半のラジオ体操までチャンバラをして遊んだ。南九州でも、当時の夏は涼しく、境内の木陰は爽やかで楽しかった。
ラジオ体操が終わると走って帰り、海水パンツに着替え、水中眼鏡をつけて直ぐ近くの海へ行った。朝の海はないでいて、潜ると海底の砂に陽光が網目状に写って綺麗だった。海は透き通っていて、猛スピードで浅瀬を泳ぎ回る魚が見えた。
海に入っているとすぐに身体が冷えるので、絶えず熱い砂浜で身体を温めた。おかげで、紫外線のダメージを大量に受け、50数年後の今、肌のトラブルに悩まされている。
お昼近くなると空腹に耐えられなくなって家に帰った。母がいれば食事を作ってくれるが、当時の子供たちは普通に、自分で干物を焼き、漬け物を刻んで昼食を作っていた。昼食後は海には入らず、山へ行ったり、近所で鬼ごっこをしたりして遊んだ。
昔を描いたホームドラマで、親が夕食に帰らない子供を捜しに行くシーンがあるが、実際はそれは少ない。昔の子供は放っておいても、腹が減れば我慢しきれずに帰っていた。夕食後はラジオドラマを聞いて、夜8時には寝ていた。だから、夏休みの宿題をする時間は皆無だった。
ラジオドラマで熱中していたのはNHKの新諸国物語だ。白鳥の騎士、笛吹童子、紅孔雀、どれも欠かさず聞き入っていた。3本とも東映で映画化され、隣の油津まで封切りを見に行った。殊に紅孔雀では中村錦之助がデビューし大ヒットした。私は美少年の中村錦之助は軟弱に見えて好きではなかった。
白鳥の騎士の白鳥の仮面、ヒヤラーリヒャラリコと始まる笛吹き童子の主題歌、紅孔雀の金粉がキラキラ光る宝のシーン、想い出すと今も胸が躍る。
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