四苦八苦しながら、9月個展の準備。08年7月9日
先日の夜半、絵を描いていると蛍光灯が消えてしまった。旧式の蛍光灯は耐用時間が過ぎるとパカパカ点滅し始めるが、インバーター式は突然に消える。今回は、暫く休ませて再度スイッチを入れると点灯した。今は電管を取り替え、明るくなった仕事場で気分よく制作に励んでいる。
今、描いている絵は9月の個展案内状に入れる作品で、ホームページ、f-17「ジムノペティ」を40号キャンバスにリニューアルしたものだ。正確に言うと、f-17は今描いている絵の下絵で、既に売却した。下絵は夕暮れの少し寂しい絵だが、新作は明るく広々としている。大きな絵は楽しい。描くうちに絵の世界に没入し、現世の厭なことを忘れてしまう。
描くのは楽しいが、大変なのは個展に使う額の用意だ。手持ちの額で気に入ったものは少なく、新たに14,5枚は揃える必要がある。インターネットで格安のメーカーを探しているが、気に入った額は高く、頭が痛い。
企画展なので会場と案内状の心配はないが、額装は作家持ちになる。売れっ子作家なら、画廊が額装から搬入搬出まで全部負担してくれる。だから作家は絵を描くことだけに集中し、雑事には一切関わる必要はない。対して我々クラスは、雑事に追われながら疲労困憊してオープンにこぎ着け、売り上げが少ないと、「額代も出ない。」と嘆くことになる。
額には油彩額とデッサン額がある。油彩額はキャンバス用の重厚なものだ。大きな額の場合は50キロを越し、壁に太い柱を入れないと壁ごと壊れる。昔の洋館は絵を飾る事を前提に頑丈に作られていたが、今の建物は見かけ倒しで、大きな額をかけて壁が崩れ、絵が破損することがある。
デッサン額はボードや紙に描いた絵をマットを使って額装する。見た目は軽やかで軽量なので、一般に好まれる。ボードを多用する私はデッサン額を主に使う。デッサン額は油彩額と比べると安いが、盲点はマットだ。これが見かけ以上に高く、予算オーバーの原因になる。
絵描きはいつも、お金作りに四苦八苦している。絵描きが貧乏なのは古今東西当たり前で、私も、43歳で絵描きへ転身してからは、いつも野垂れ死に覚悟だった。それが、20年間、危ない危ないと言いながら暮らして来れたのは運が良かったからだ。しかし、野垂れ死にの危惧は最期まで付いて回りそうだ。
金策と比べると制作など容易だ。もし、絵描きが制作に苦労しているとすれば、アルバイトの疲労とストレスで制作意欲が削がれているからだ。
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