遠く花火の音を聞きながら、来年のグルメ便を選んだ。08年8月2日
今朝、母の散歩で車椅子を押していると、顔馴染みの老人が「毎日、頑張りますね。」と挨拶した。
「一日、二日と休みますと、体力が急速に落ちます。更に三日休むと寝たっきり寸前になります。それで、一日も休めません。」と、答えると、「それは私も同じで、よく分かります。」と、老人は深く頷いていた。
先々週、個展案内状用絵の仕上げや、病院行きで散歩を休んだ時、母は気力がなえて、一過性に一人で立ち上がれなくなった。母を介護するようになってから、寝たっきりと自立の分かれ目がとても狭いのに気づいた。毎日の散歩でも、体力の限界を見極めながら母を散歩に連れ出している。食事の時も、ベットで食事したがる母を頑張らせて、テーブルまで連れて行く。僅か数メートルの距離だが、テーブルへ着くと母はぐったりして「疲れた。」とため息をつく。吐き気止めのナウゼリンを事前に服用させているが最近効き目が弱まった。母は吐き気を押さえ込みながら無理に食事をする。今の母は生きているのが苦痛そのものに見える。
しかし、散歩している時の母は違う。知人と笑顔で挨拶を交わし、ペットたちに声をかけ、自然の移変わりに感動する。今朝の散歩でも、母は路傍の草むらを眺めながら、「今年も沢山土筆を見つけたね。」と感慨深く話していた。2月に土筆が出て、桜が咲き、新緑へかわり、今は猛暑。この5ヶ月は一瞬に過ぎてしまったが、間違いなく生きている感動は残った。母にとって、その感動があると無いのでは老後は大きく違ったものになる。母は近代医学の力より毎日の散歩の方が、遥かに生きる力になっているようだ。
昼食後の暑い午後、母はアイスノンを枕にベットに横になっていた。冷蔵庫から濡れタオルを出して、母の頭に載せ、足に霧吹きをした。薄く濡れた足をベランダからの風が吹き抜け、「冷たくて生き返る。」と母は喜んでいた。我々なら何でもなく耐えられる暑さが、老人には命取りになる。しかし、冷房にすると、身体が暑さに耐えられなくなって散歩ができなくなる。私は熟考した末、冷房無しで過ごして、毎日散歩ができる方を選んだ。
知人からグルメ便のカタログが送って来た。カタログから選んだ品が毎月送られて来るシステムだ。数年前から続く贈り物で、とても助かっている。
カタログを開いて、母が食べられるものを選びながら来年のページに進んだ時、ふいにその頃母は元気だろうかと考えてしまった。去年も同じ事を考えたが、今の母の弱り具合を考えると、今度こそグルメ便を一人で食べることになるのかもしれない。
日が落ち散る前から花火の音が聞こえる。忘れていたが、今夜は板橋区と荒川対岸の戸田市共催の花火大会だ。以前は玄関に椅子を置いて母を座らせて見学させていたが、数年前から無理になった。
好天なので今夜の荒川土手は賑わうだろう。
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